
熊本大学や大阪大学などの研究チームは精子が卵子と出合うために、子宮から卵管に移る仕組みを解明した。精子のたんぱく質が子宮と卵管のつなぎ目にある物質とくっつき移動する。受精には精子の移動が欠かせない。今回得られた知見は不妊の診断や避妊薬の開発につながる可能性がある。
精子は体内に入った後、子宮から卵管を通り、卵子がある卵管膨大部へと泳ぐ。卵子と出合うには、子宮と卵管のつなぎ目を通過しなければいけない。どのような仕組みで移動するのか詳しくわかっていなかった。
研究チームは受精に関わる遺伝子を網羅的に調べ、たんぱく質「GALNTL5」に着目した。この物質が作られない雄マウスは不妊になった。観察すると、精子は子宮から卵管に移動していなかった。GALNTL5は子宮と卵管のつなぎ目にある糖の一種に結合すると突き止めた。精子が子宮から卵管に移動するには、この結合が重要になると考えられる。
国内では約4組に1組のカップルが不妊の検査や治療を受けたことがあり、その半数は男性に原因があるとされる。ただ、男性不妊の4〜5割は原因がわかっていない。
従来の研究では、精子が十分に作られなかったり、正常に泳げなかったりする点に着目した研究が多かった。研究を主導した熊本大の野田大地准教授は「精子が体内で卵子と出合う仕組みを明らかにした点が新しい」と意義を強調する。
今回突き止めたたんぱく質を調べることで、不妊を診断できる可能性がある。たんぱく質と糖の結合を人為的に抑えられれば避妊薬の開発にもつながる。今回の研究成果は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。
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