量子科学技術研究開発機構(QST)などは、重粒子線がん治療向けに開発に取り組んでいるレーザーでイオンを加速する装置を改良した。イオンの速度を制御でき、装置の小型化などにつながる。水素イオンを加速する実験に成功した。今後は実際の治療で使う炭素イオンなどで実証を進め、実用化を目指す。

照射システムにイオンの速度をそろえる機器を組み込んだ=QST提供

研究成果をまとめた論文は「レビュー・オブ・サイエンティフィック・インストゥルメンツ」に掲載された。

重粒子線がん治療は放射線治療の一種で、炭素イオンなどを使う。正常な組織へのダメージが少なく患者の体にかかる負担も小さいが、イオンを加速するために大型の加速器が要る。QSTなどはレーザーを使うことで装置の小型化を目指している。ただイオンの速度がばらつくために、別の装置でさらに加速する際の効率が低かった。

QSTの榊泰直上席研究員らは電場の強度を変えてイオンの速度を制御する装置を照射システムに組み込み、イオンの速度を一定の範囲内に調整した。今回は水素イオンを使って実験したが、今後は臨床で使用する炭素イオンを使って実証を進める。

現在の重粒子線治療には大きな装置が必要で、治療を受けられる施設は限られている。装置を小さくできれば導入できる病院を増やせる。治療に必要な速度までイオンを加速する別の装置の開発も進め、重粒子線治療の普及を目指す。

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