警視庁麹町署=東京都千代田区で、安達恒太郎撮影

 虚偽の処方箋を書いて薬局から高額な医薬品をだまし取ったとして、警視庁麹町署は1日、東京都渋谷区の医師、小西悠太郎容疑者(44)を詐欺容疑で逮捕したと発表した。実際の診断に基づかない処方箋を患者に無断で作り、処方された薬を自ら受け取って転売していたとみられる。

 逮捕容疑は、東京都渋谷区の「たいなクリニック」(閉院)の理事長をしていた2021年7~8月、高齢女性2人の名前を使って虚偽の処方箋を作り、千代田区の調剤薬局運営会社から抗がん剤「アフィニトール錠」など医薬品923点(400万円相当)をだまし取ったとしている。容疑を認めている。

 麹町署によると、小西容疑者は事件当時、女性2人が入居する都内の介護付き有料老人ホームの往診医だった。2人とも、がんではなかったが、小西容疑者は診察時に得た個人情報を用いて1錠1万円するアフィニトール錠や1錠5000円する降圧剤の処方箋を勝手に作成。「がん患者が取りに行けないので自分が行く」と言って自ら薬局に出向き、薬を受け取っていたという。

 保険適用により薬代の患者負担は1割で、小西容疑者は代金を払って得た医薬品を卸業者に持ち込んで転売していた。「交遊費や借金の返済に充てた」と供述している。

 小西容疑者にかかっていた複数の患者から「身に覚えのない薬の処方記録が載った医療費通知を受け取った」という連絡を受け、医療制度を運営する都後期高齢者医療広域連合が警視庁に相談して発覚した。21年7~8月だけで、1億円相当の医薬品を不正に得ていたとみられる。

 厚生労働省によると、小西容疑者には診療報酬の不正請求の疑いもあったが、監査を拒んだとして24年に保険医登録取り消しの行政処分を受けている。【菅健吾】

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