高齢者の体力が向上している。スポーツ庁が12日に公表した2024年度の体力・運動能力調査によると、70代で平均より高い体力があった人は6割超で、過去30年でほぼ倍増した。一方で30代の体力は低迷しており、将来の健康に影響する懸念もある。

調査は24年5〜10月、6〜79歳の男女約5万9千人に実施。握力や上体起こしなどの測定結果を点数化し、合計点の高い方からA〜Eの5段階で評価した。5段階の区分は現行方式で調査を始めた1998年度に設定されており、Cが平均的な体力に該当する。

AかBと評価された割合を各年代(いずれも後半)で比較すると、シニア世代で増加が目立った。70代の男性は65%、女性は67%に上り、全世代で最も高い。98年度比でそれぞれ29ポイント、36ポイント増えた。

全身の筋力のバロメーターとされる握力は男性が同1.6キロ増の35.1キロ、女性は同2.0キロ増の22.7キロだった。

30代でAかBだったのは男性で34%、女性は22%。女性は同13ポイント減だった。

高齢者の体力向上の背景には、運動習慣の定着があるとみられる。同庁の2024年度の世論調査によると、週1日以上スポーツを実施している割合は70代で68%を占め、10代(58%)など他の世代を上回った。

順天堂大学の鈴木宏哉教授(発育発達学)は「シニア世代にも運動が必要だという考え方が過去30年で社会に定着した影響が大きい」とみる。

1960年代ごろから運動と健康に関する研究結果が欧米を中心に報告されるようになり、70年代以降に日本でも国による健康促進策などを通じて浸透したという。

90年代には全国で高齢者向けの運動教室などが増え、競技や娯楽にとどまらない「健康のための運動」が広がった。

鈴木教授は現役世代の体力の低迷については「働く女性が増えるなどし、運動する余裕がなくなっている面がある」とする。

そのうえで「シニア世代になった時に体力の低さや運動習慣の少なさが持ち越され、健康リスクが増すだけでなく、医療・介護費の増大など社会課題に直結する可能性がある。企業が社員の運動を促すといった対策が必要だ」と指摘している。

(斎藤さやか、蓑輪星使)

【関連記事】

  • ・健康を意識すると人生豊か 状況改善目指すインドネシア
  • ・なんてったって、マッスル 2050年は80歳も筋トレで健康
  • ・「わずか1000歩」多く歩くだけで病気のリスク低下 速足も不要
  • ・GMO熊谷正寿社長の休養学「仕事より運動を優先」 会社も絶好調
最新の社会ニュース・コラム・調査報道

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。