三重県鳥羽市の鳥羽水族館にある「へんな生き物研究所」で展示されているイソギンチャクが、新種「ツキソメイソギンチャク」と同種であることが分かった。同館は「すてきな名前がついた」と喜んでおり、これまでなかった名前を表示する。
このイソギンチャクは特定のヤドカリに付着して共生するのが特徴。今年5月に底引き網漁船に館の飼育員が乗船して熊野灘の深海から採集した。
三重大出身の吉川晟弘(あきひろ)熊本大准教授や同館などでつくる研究チームが、このイソギンチャクが新種であることを突き止め、今月の英学術雑誌で発表。淡い桃色とヤドカリの強い結び付きから、万葉集で愛の歌に詠まれている「桃花褐(つきそめ)」を冠して命名した。
吉川准教授によると、ツキソメイソギンチャクは体長2~3センチのアカモントゲオキヤドカリが背負う貝殻にしか付着しない。飼育が難しかったが、研究チームは水温や水流などを整えることで成功。詳細な観察やDNA解析、過去に採集された標本の分析などから新種と判断したという。
このイソギンチャクはヤドカリのふんを餌にしているとみられる。一方、ヤドカリにとってはイソギンチャクの分泌物が固化して住みかが「増築」されるため引っ越しいらず。ウィンウィンの関係にあるらしい。
鳥羽水族館は「名前がついて良かった。今後も深海生物の不思議を伝えられる研究や展示をしていきたい」としている。【小澤由紀】
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