鈴木健太・秋田県知事(左)からクマの捕獲に伴う活動支援の要望書を受け取る小泉進次郎防衛相=東京都新宿区の防衛省で2025年10月28日午前10時50分、松浦吉剛撮影

 クマによる人身被害が深刻化する秋田県の鈴木健太知事が28日午前、東京・市ケ谷の防衛省で小泉進次郎防衛相と面会し、自衛隊の派遣とクマの捕獲に伴う活動支援を正式に要望した。小泉氏は自衛隊による支援に積極的な姿勢を示し、同日午後にも陸上自衛隊東北方面総監部の隊員を秋田県庁に派遣して、ニーズに基づく具体的な支援策の検討を始める考えを明らかにした。

 鈴木氏は、市街地を含めてクマによる人身被害が相次ぎ、26日現在で2人の死亡を含め54人に上るなど「これまで経験したことのない危機的な事態」と記した要望書を小泉氏に手渡し、「県と市町村、県警で駆除に努力してきたが、問題が長期化し、現場の疲弊がピークを迎えている。県内のマンパワーや資源では対応できない」と説明。「ぜひとも自衛隊の力を貸していただきたい」と訴えた。

 これを受けて小泉氏は「秋田県民の皆さんが抱いている命を脅かされる恐怖と、毎日の平和な暮らしが破壊される不安は察するに余りある」と強調。「与えられた能力と権限を最大限に生かし、秋田県と協力して早急に対応策を練り、安全と安心を取り戻す」と話し、自衛隊による支援に積極的な姿勢を示した。

 具体的な対応については今後の検討次第だが、武器によるクマの駆除は想定されておらず、捕獲のための箱わなの運搬と設置▽仕掛けた箱わなの見回り▽駆除したクマの解体処理――などの後方支援活動が見込まれている。

 防衛省によると、鳥獣対策支援では北海道で2010~14年度、エゾシカ駆除のため自衛隊のヘリコプターでシカの捜索や生息状況を調べたり、雪上車で駆除したシカを輸送したりしたほか、高知県でも14~16年度にニホンジカ駆除のためヘリで生息状況を調査した事例がある。いずれも自衛隊法83条の災害派遣ではなく、訓練目的に適合する場合に自治体から土木工事などを受託する同法100条などに基づく対応だった。【松浦吉剛、加藤昌平、洪玟香】

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