シャチは人間からも恐れられているホホジロザメすら捕食する Tory Kallman-shutterstock
<海の生態系の頂点に立つシャチは、ホホホジロザメを捕食する唯一の動物だ>
シャチが英語で「キラーホエール」と呼ばれるのには理由がある。それを何よりも雄弁に物語っているのが、最近明らかになったシャチによる若いホホジロザメ補食に関する発見だ。
【動画】ホホジロザメを食べるシャチの群れ
カリフォルニア湾で確認されたシャチの群れが、標的のホホジロザメを、計算された残酷な戦略を用いて捕食する様子が観察された。
シャチは、若いサメを繰り返しひっくり返すことで一時的な麻痺状態に陥らせ、栄養価の高い肝臓を引きずり出しているのだ。
この研究は、シャチがホホジロザメを狩る頻度は想像以上に高い可能性を示唆している。
シャチはホホジロザメを捕食する唯一の捕食者だが、捕食の記録はこれまで南アフリカ沖での成体ザメを対象とした狩りに限られていた。
研究者たちは、カリフォルニア湾でシャチの群れを定期的に観察。狩りの様子を2回確認しており、合計で3匹の若いホホジロザメが狩られて命を落とした。
この群れは、群れの中で目立つ個体にちなんで「モクテスマの群れ」と名付けられた。この群れは2020年と2022年にも同様に、チームプレーで狩りを行っていた。
シャチの攻撃において鍵となるのが、サメを背中側にひっくり返すという手法だ。これによってサメは一時的に麻痺状態になる。
「これによりサメは無防備となる。その隙に、シャチは栄養価の高い肝臓や他の内臓も食べたうえで、残りの死骸を放置する」と、論文著者で海洋生物学者のエリック・ヒゲーラ・リバスは語る。
狩りの最中、複数のシャチが連携して若いホホジロザメを水面まで押し上げ、そこでサメを反転させていた。やがてシャチたちは、サメの肝臓だけを口にくわえて再び姿を現したという。
<未熟な個体を狙い撃ち>
研究者たちは、このシャチの群れが近隣に存在するホホジロザメの「保育場」を利用している可能性があると見ている。「保育場」にいる経験の浅い小型のホホジロザメを効率的に捕食しているのではないかと考えているのだ。
「シャチが若いホホジロザメを繰り返し標的にしているのを確認したのは、今回が初めてだ」と、論文著者でカリフォルニア州立大学の海洋生態学者サルバドール・ヨルゲンセンは述べた。
「成体のホホジロザメは、シャチによる狩りにすばやく反応する。シャチが集結するエリアから完全に姿を消し、何カ月も戻ってこない。しかし、若いホホジロザメたちは、シャチに対して無知である可能性がある。ホホジロザメの捕食回避行動が本能的なものなのか、学習によって身につけるものなのか、我々には分からない」
モクテスマの群れは、エイ類のほか、イタチザメやジンベエザメを狩っている様子が観察されている。シャチは経験を通じて狩りの技術を学ぶことが示唆された。
「サメやエイといった板鰓類(ばんさいるい)を食べるシャチであれば、ホホジロザメを狩ろうと思えば、どこででも狩ることができるだろう」と、ヒゲーラ・リバスは言う。
「シャチの高度な知性、戦略的思考、そして洗練された社会的学習の証左だ。こうした狩猟技術は群れの中で世代を超えて受け継がれている」
【参考文献】
Higuera-Rivas, J. E., Pancaldi, F., Jorgensen, S. J., & Hoyos-Padilla, E. M. (2025). Novel evidence of interaction between killer whales (Orcinus orca) and juvenile white sharks (Carcharodon carcharias) in the Gulf of California, Mexico. Frontiers in Marine Science, 12.
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