写真はイメージです mark higgins/Shutterstock

<北米で相次いで目撃される「不気味な突起物」だらけのリス。グロテスクな見た目の写真がいくつも拡散されているが、その正体は何なのか>

ここ数年、体に腫瘍や「ただれ」のあるリスの目撃情報がSNS上で注目を集めてきたが、最近ではアメリカやカナダ各地で、さらに異様な姿のリスが確認されている。体に不気味な突起物や模様を持つこれらのリスは、ネット上や一部メディアで「ゾンビリス」と呼ばれている。

■【写真】顔から異様な突起物...グロテスクな外見の「ゾンビリス」発見相次ぐ 「新たな悪夢」と写真が拡散

最近話題になった、顔面に角のような突起を持つウサギと同様に、これらのリスも何らかのウイルスに感染している可能性が高いと見られている。バージニア工科大学で野生生物科学の准教授を務めるジェームズ・パークハーストは本誌に、次のように語った。

「最近報告されているこの症状は、感染した動物の見た目のグロテスクさと、個別の事例がSNSを通じて不安や恐怖を煽る形で誇張されやすいという事情のせいで、実態以上の注目を集めていると言える」

実際、インパクトの強いリスたちの姿は、不安と同時にある種のネタとして消費されている側面もある。異様な見た目のウサギが話題になった時も、感染症によって文明が崩壊する「The Last of Us(ザ・ラスト・オブ・アス)」というゲーム原作のテレビシリーズになぞらえる声が上がったが、今回も「新たな悪夢」などのコメントが多く投稿されている。

専門家たちはこうしたリスには触れないよう注意喚起しているが、原因が何であったとしても、現時点ではこの症状が人間にとって危険である可能性は低いとみられている。

リス痘やリス線維腫症の可能性を指摘する声

この不気味な外見の原因はまだ特定されていないが、リス痘(squirrel pox)やリス線維腫症(squirrel fibromatosis)が原因ではないかという指摘があり、現時点では後者の可能性の方が高いと見られているようだ。

リス痘は主にイギリスのアカリスの間で見られることが多い。一方、リス線維腫症の症例は珍しく、通常は一度の事例で感染が確認されるのは10匹未満にとどまるという。ただしパークハーストによれば、1990年代後半には100匹規模の大規模な流行も起きている。

多くの場合は春の終わりから夏の終わりにかけて発生し、主な感染経路は蚊などの吸血昆虫だ。ハエの一部やダニなどもウイルスを媒介する可能性があり、リス同士の接触でも感染が拡大すると見られるとパークハーストは指摘する。

ここ数か月、こうした腫瘍のあるリスが米国内の民家の庭などで目撃される例が相次いでおり、不安の声が広がっている。デイリー・メールの報道によれば、7月にはRedditに「最初は何かを食べているところかと思ったが、よく見たら顔についているものだと気づいた」と投稿している。

パークハーストは、「年間の発症件数の少なさに加え、大半の人にはリスと直接触れ合う機会がない。このウイルスが人に感染したという記録はなく、多くの専門家は人間にとって深刻な脅威とは考えていない」と指摘する。

いずれにせよ、感染が疑われるリスを見つけてもむやみに触れたり捕まえたりせず、そっとしておくのが望ましいようだ。

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