東京・上野動物園の双子のジャイアントパンダ、シャオシャオ(雄)とレイレイ(雌)を中国に返還すると15日、東京都が発表した。日中関係が冷え込む中、友好の象徴としても愛されてきた人気者がいなくなる。園や街の関係者から寂しがる声が聞かれた。
日本でパンダの飼育が始まったのは1972年。日中国交正常化を契機に中国からカンカン、ランランが贈られ、上野が飼育を担当した。その後、上野では中断期も含めて53年間で計15頭を飼育。シャオシャオとレイレイは来年1月25日が最後の観覧日となる。
日中交流の象徴となったパンダは、72年の贈呈当時、上野の園長らが二階堂進官房長官に呼ばれ「決して殺してくれるなよ」と言われたというエピソードが残されている。超党派でつくる日中友好議員連盟の森山裕会長(前自民党幹事長)らも4月の訪中時、新規貸与を要請していた。
都は15日、報道陣への説明会で、新しいパンダのペアの貸与を希望しているものの、中国側からはっきりとした返答がないことを明らかにした。台湾有事を巡る高市早苗首相の国会答弁を機に日中関係が悪化しているが、担当者は「日中関係を受けて変わったことではない」として、答弁の前後で変化はないと説明した。
金子美香子副園長は「期限が決まっているので、(双子を)最後まで健康に飼育して送り出すのが使命。寂しいところではありますが、受け止めていくということかなと思います」と複雑な胸中を明かした。
上野動物園近くの甘味処(どころ)「あんみつ みはし」の佐藤一也社長(70)は驚きを隠せない様子で、「国同士の関係もあるのだろうが、日中国交正常化以来、パンダは上野の象徴。経済的な側面よりも精神的なショックが大きく、ただただ残念だ。いつかまた(上野に戻って来る)その日を信じて待ちたい」と話した。
茨城県から観光で上野を訪れた80代女性は「返す期限が決まっていたので仕方ない」としつつ「両国が仲良くしていればパンダがいたかもしれないと思うと、悲しい」と語った。
動物園前のパンダ像近くで子どもと遊んでいた台東区の主婦、楢原みどりさん(39)は「とても寂しい」と落胆した。動物園の年間パスポートを持ち週2、3回訪れるといい、「ササを食べる姿が愛らしかった。返還される前にもう一度見に行きたい」と話した。【古瀬弘治、白川徹、遠藤龍、加藤昌平】
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