イクラ、数の子、エビ、黒豆にだて巻き……新年の最初の楽しみと言えば、色鮮やかな食材が詰まったおせち料理を思い浮かべる人も多いだろう。
2026年のおせちは、品数豊富だが価格は抑えめな「コスパ重視」のものと、高価格で豪華けんらんな「プレミアム感」があるもので、二極化しているようだ。
令和のおせち事情に迫った。
最高級100万円おせち
「松屋史上最高価格100万円の最高級おせち」
今年100周年を迎えた老舗デパートの松屋銀座(東京都中央区)は、これまでにない価格設定でおせち商戦に挑んだ。
日本料理店「青草窠(せいそうか)」が国産ウニやカニといった厳選食材、ゼンマイ、黒豆の煮炊き料理などを手がけた。
豪華食材を詰める重箱は、有田焼の窯元「辻精磁社(つじせいじしゃ)」が四季の自然をあしらい焼き上げた逸品。皿5枚もセットでついてくる。
企画から完成まで約1年半。「究極のおせちを」との思いで、料理にも器にも最高品質を求めてこだわり抜いた。9月6~30日に注文を受け付け、3台が売れたという。
売れ筋の価格帯は?
松屋銀座ではこの他にも、1万円台~30万円台で200種類以上のおせちを店頭やオンラインショップで売り出した。
料亭の和風おせちに、有名シェフによる洋風おせち、肉のみのオードブルからスイーツおせちまで多種多様で、1人1段ずつ食べられるおせちも用意した。
バイヤーの山下寿徳さんは売れ筋について「ハイクオリティーで高価格のものも完売する一方で、比較的お手ごろな価格で、色々な種類のものがたくさん楽しめるおせちも人気が高いです」と説明する。
「原材料費高騰は多少なりとも価格に反映されていますが、中には『年に1度の晴れの日だから』と価格据え置きのところもありました」
食材費高騰 おせちにも波及
売れ筋おせちの二極化には、原材料費高騰が影響しているようだ。
帝国データバンクが11月に公表した、全国の大手コンビニ、百貨店、スーパーなど計110社を対象に実施した調査によると、26年のおせちの平均価格は2万9098円で、前年と比べて1054円上がった。
例えば、「子孫繁栄」の願いがこめられるイクラは27%、数の子は12%(いずれも25年9月時点の価格で、前年同月比)も値上がりしており、おせちの価格上昇に影響している。
値上げに踏み切ったのは65社で、値上げ幅で見ると、1000円台が22社と最も多かった一方、16社が3000円以上値上げした。
調査を担当した東京支社情報統括部の飯島大介さんによると、小幅な値上げにとどめた商品は「大容量」などとお得感を打ち出す傾向があった。
一方、値上げ幅は大きいが、食材をグレードアップし「量より質」をアピールする商品もあるという。
「節約」「ごちそう」二極化
飯島さんは「『節約志向』に対応した商品と、比較的高級な『ごちそう』商品とに分かれ、二極化がより進んだ」と分析する。
また、近年の円安などの影響で新年を家族や親族と過ごす人が増えたこと、材料価格の高騰で手作りが割高になっていることも、おせち商戦を後押ししているようだ。
ただ、おせち価格のボリュームゾーン上限は「3万円」とされる。今後は値上げが難しくなって、差別化を図ることの重要性が一層高まる見通しという。【田中理知】
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