日ごろからデス・リテラシーを高めておくことが重要だ。家族の介護が必要になれば、より実践的な終末期のケアの知識が役にたつ(写真はイメージ)=ゲッティ

 死後の手続きや、終末期を支援してくれる人を知っていますか――。

 みとりや終末期のケアに関する知識やスキルを指す「デス・リテラシー」をどの程度備えているか、スコア化する測定ツールの日本語版が開発された。

 この測定ツールはオーストラリアの研究者が開発したもので、世界各国で研究が進んでいる。

 日本全国の2500人を対象にした調査では、平均スコアは10点満点中3・82点で、中国や英国を大きく下回ったという。

 なぜデス・リテラシーが重要なのか。日本語版を開発した共同研究グループ代表で、千葉大学予防医学センター特任助教の河口謙二郎さん(41)に話を聞いた。

日本はなぜ低スコア?

「デス・リテラシー」の調査で、日本の平均スコアは各国よりも低い3・82点だった=千葉大学提供

 デス・リテラシーの測定ツールは、「在宅で亡くなった際の法的手続き」や「介護用品・福祉用具の調達を手助けしてくれる人」をはじめとする29項目について「まったく知らない」から「とてもよく知っている」などの5段階で回答し、スコアを算出する。

 研究グループは、日本の文化や制度に合わせてアンケート項目を言い換えるなど修正を重ね、日本語版を開発した。

 昨年2月、全国の20~79歳の男女2500人を対象にインターネット調査を行ったところ、日本の平均スコアは、先行調査があった英国(4・76点)、オーストラリア(4・83点)、スウェーデン(5・15点)、中国(6・7点)を軒並み下回った。

 日本は、終末期にケアを支援してくれる地域の団体や組織を問う「地域に関する知識」が特に低く、10点満点中3・2点だった。

 河口さんは研究活動の傍ら、都内の病院で一般内科の医師としても勤務している。

デス・リテラシーの測定ツール日本語版を開発した共同研究グループ代表の河口謙二郎・千葉大学予防医学センター特任助教=本人提供

 1人暮らしの高齢の患者の場合、日々の見守りや病院への付き添いなどを手伝ってくれる地域住民の大切さを実感していた。

 「高齢化が進む日本のデス・リテラシーは高いのではないかと考えていたのですが、予想よりも低い結果でした」と驚く。

 日本では国民皆保険制度や介護保険制度が整備されている分、終末期のケアやみとりにまつわる手続きが行政や専門職に任せきりになりやすい上、「死について話すことに抵抗感を覚え、忌避する文化的背景も影響しているのではないでしょうか」と河口さんは指摘する。あくまで自己評価なので、日本人の場合は控えめになりやすい可能性もあるとみられる。

年代に応じて学ぶ機会を

 デス・リテラシーは、親しい友人や家族と死について話し合い、いざというときに手助けしてくれる自治会やボランティア団体などについて情報収集することで高めることができる。

 若い世代にとっては、終活はまだ早いと考えがちだが、河口さんは「それぞれの年代に応じて、学ぶ機会があるとよいでしょう」と語る。

みとりや終末期のケアに関する知識やスキルを意味する「デス・リテラシー」。日本は諸外国に比べてスコアが低いことが調査で分かったという(写真はイメージ)=ゲッティ

 若い人であっても、身近な人を亡くしたときに頼れる人や場所があることを知るのは重要だ。また、年を重ねて親の介護などが必要になれば、より実践的な終末期のケアの知識が役立つようになってくる。

 「教育プログラムを準備し、自治体に加えて学校や職域などを通じて、学ぶ機会を増やしていくことが重要だと思います。ボランティアなどの形で、専門職以外の人も介護のケアに携わる機会を積極的につくることもよいのではないでしょうか」

 総務省によると、65歳以上の高齢者人口は昨年9月時点で推計3619万人。人口に占める割合は29・4%と過去最高を記録し、今後も上昇する見込みだ。

 「(担い手不足によって)医療や介護ばかりに頼れない時代がやってきます。備えるためには、地域の力を活用していくことは避けられません」

 河口さんは開発した調査を活用し、地域全体で人生の最期を支え合う社会づくりに向けた支援策を提言していきたいという。【川上珠実】

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