
生成AI(人工知能)を使って視覚障害者が主体的に制作に参加する「点字デジタルアート」の手法を兵庫県姫路市の画家、寺前高明さん(67)が考案し、同市で視覚障害者に体験してもらった。対話しながら視覚障害者が持つイメージをデジタル画像で表現するもので、体験者は「絵筆を持つものと思っていたが、画期的な方法だと感じた」と話した。
寺前さんは、視覚障害者が書いた俳句作品を読むことがあり「どんな心象風景を思い描いているのだろうか」と興味を持ったことがきっかけで、それを表現する方法を考えたという。点字デジタルアートの作品はデジタル画像に加えて、点字プリンターで出力される点図や作品の音声解説で構成され、晴眼者も視覚障害者も鑑賞できる。

制作は、視覚障害者から表現したいイメージや感情などを聞き取り、回答を画像生成AIへのプロンプト(指示)に変換・入力して画像を完成させる。質問項目は幼少期の思い出や自然体験、音や香りの好みなどの多岐にわたる。画像が完成した後も、視覚障害者と対話しながら修正を加える。視覚障害者と晴眼者が一緒に作品を鑑賞し、対話して作品を理解する「ソーシャルビュー」という手法を取り入れているという。
制作体験には同市の60~70代の視覚障害者3人が参加。その一人の女性は、作品タイトルを「10年後の私」と決め、昔から好きだったという赤いバラの花をモチーフにした画像が完成した。失明後イライラした時期をへて穏やかな心境に変わった半生を振り返り、そのイメージも表現した。
寺前さんは、点字デジタルアートの手法について「今後、多くの視覚障害者と対話して、心の中の風景を絵として表現してみたい」と話している。活動の詳細は、点字デジタルアート公式サイト。【馬渕晶子】
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