家畜や人を脅かすハエの大発生(写真はイメージです) Larashir-Pixabay

<人や動物に寄生する「肉食バエ」が、アメリカの国境にジリジリと迫っている>

中米で被害が広がっているのは、人間や動物に寄生する「ラセンウジバエ」。傷口や開口部に卵を産み付け、孵化した幼虫はその動物の肉を食べる。病変や傷口が広がって宿主が死に至ることもある。

【写真】人や動物に寄生する「肉食バエ」が中米で急増...かつて根絶されたアメリカに迫る

アメリカでは1966年に根絶されたものの、2016年に確認されたシカの症例など、散発的ながらも深刻な被害が発生。ここ数年は中米で急増している。

メキシコでは、アメリカのテキサス州と隣り合わせのタマウリパス州とヌエボレオン州を含め、全土でラセンウジバエが確認された。

イギリスの大学の生物学教授、リチャード・ウォールがConversationに寄せた記事によると、ラセンウジバエの急増を招いたと思われる理由は幾つかある。監視や防止の費用がかさむ中、アメリカの連邦予算カットで対外援助が削減されたために監視が弱まって、中米のラセンウジバエ対策に影響が出た。

国連はアメリカが2025年3月に資金を引き揚げたことを受け、ラセンウジバエ監視対策を縮小した。ただ、その後ラセンウジバエ対策のための新たな連邦資金拠出が発表されている。

アメリカ農務省動植物検疫局(APHIS)は、ラセンウジバエを「壊滅的な害虫」と位置付け、人や動物が感染すれば深刻な被害が生じ、死に至ることもあると指摘する。

その上で、現時点で米国には存在していないものの、ラセンウジバエをアメリカに寄せ付けないため、農務省主導で保健当局が一体となった国家的な対策を講じているとした。

もしも家畜に不審な傷口や幼虫が見つかった場合、あるいは寄生の疑いがある場合は獣医師に連絡を取るよう同省は促している。人の感染が疑われる場合は医師の診察を受ける必要がある。

アメリカ南部では1950年代まで、畜牛への感染が拡大して牛肉生産者に大きな損害が出ていた。1935年の被害推定はテキサス州だけで家畜23万例、人間55例に上った。

20世紀後半になると根絶の取り組みが大きな成果を挙げた。使われたのは、繁殖させた個体群を放射線で不妊化させる、いわゆる不妊虫放飼法だった。

不妊化したオスを放して野生のメスと交尾させることで繁殖を抑え、個体数の減少につなげる。

しかしウォールによると、不妊虫放飼法は孤立した個体群に対して最も効果を発揮する。従って、現在の大発生はそう簡単に食い止められない可能性がある。

アメリカ疾病対策センター(CDC)は、ラセンウジバエが確認された地域の住民や旅行者はリスクが大きいとして注意を促している。

症状としては、皮膚の傷口の中、あるいは耳、鼻、目、口の中で幼虫が動き回る感覚があったり見えたりすることがある。

皮膚の傷口や痛みは数日で悪化して感染部位は悪臭を放ち、開いた傷口から出血する。傷口の感染のために発熱や悪寒などの症状を伴うこともある。

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