クラウド化されて一元管理できるようになった校務用端末=福島市南町の福島第一中で2025年8月25日午後2時10分、錦織祐一撮影

 福島市教育委員会は、市立小中学校(義務教育学校、特別支援学校を含む)の教職員が学校で使うネットワークを8月から一元化した。従来は校務系と学習系のネットワークを別々に管理して端末も使い分けていたため、機微情報を扱う校務処理の多くを職員室の限られた端末で操作しなければならず、その都度、教員が移動する必要があった。市教委は「子どもを見守る時間が増えることで教育の質の向上につながる」と期待している。

 文部科学省は同様の「校務支援システム」を全国で構築することを目指しており、秋田県などでモデル事業を展開している。県立学校は既に導入しており、市町村では県内で初めてとなる。

 市教委はこれまで、子どもの学習状況や健康状態などの機微情報をデータセンターで厳重管理し、接続できる校務系端末を限定していた。一方、政府の「GIGAスクール構想」で子どもに配布されたタブレット端末は学習系のネットワークに接続し、授業に使ってきた。

 教室で担任のタブレット端末に欠席連絡が入っても、わざわざ職員室に移動して校務系端末に入力する必要があった。教材などで多用するワード、エクセル、パワーポイントなどのソフトウエアは校務系端末でしか編集作業できず、データをいちいち学習系端末に移さなければ子どもに送信できなかった。さらに、これらの作業は管理職の許可を必要としていた。

 新システムでは、インターネット上にデータを保管する「クラウド」を活用してこれらを一元管理する。このクラウドは外部からの侵入などに対し、政府の安全性評価基準をクリアしている。

 クラウド化により、市内にあったデータセンターは運用を終え、業務に使う端末も減るためコスト削減につながった。ネット環境があればどこでもデータにアクセスできるため、教室や出張先でも校務処理できる。テレワークも可能になり、データを校外に持ち出す必要もなくなるため、個人情報紛失などのリスクも減る。

 新しい校務用端末の実演を公開した市立福島第一中(同市南町)の山田智恵主任教諭は「教室という、子どもの近くにいられる場所で作業ができるのは大きい。教育の充実に間違いなくつながる」と話していた。【錦織祐一】

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