写真はイメージ=ゲッティ

 必要な介護サービスが受けられない「介護難民」を救うため、要介護者とヘルパーをつなぐ「クラウドケア」のサービスが注目されている。

 「延々と介護を繰り返す毎日で精神的に行き詰まり、義務感で押しつぶされる感覚です」。働きながら一人で母親(92)を介護する東京都在住の男性(52)は日々の心境を語る。

 男性は、認知症の母親の服薬やリハビリのため毎日付きそっている。公的介護サービスが利用できる平日は短時間の仕事に出ることもできるが、サービスが利用できない週末は付きっきりの介護が必要になる。

 こうした生活の息抜きとなっているのが、クラウドケアだ。ウェブサイトや電話で介護が必要な人とヘルパーをマッチングさせるサービスで、男性は月に1~2回、週末の夜間に3時間ほど母親の見守りを依頼している。近隣の公的介護サービスでは対応していない時間帯だ。「必要な時間に来てもらえる点がよい。リフレッシュできるので助かっています」と話し、趣味の昆虫採集を楽しむ時間に充てている。

ヘルパーに介護される男性の母親(左)=クラウドケア提供

 クラウドケアのサービスは介護保険外のため、全額自己負担となる。料金は訪問介護なら1時間当たり税込み2750円から。公的介護サービスと比べ高額だが、家事援助や旅行の付き添いといった多様なニーズに応じている。クラウドケアの担当者は「24時間の対応や利用の1時間前まで申し込みが可能など、利便性のよさが支持を得ている」と話す。

 猛暑の影響で「親の熱中症対策」としての利用も増えている。

 クラウドケアによると、今年の5月20日~8月20日に親の熱中症対策としての依頼が、昨年同期比で約1・5倍に増えた。高齢者は就寝時にエアコンを使わなかったり、トイレに起きないよう水分補給を控えたりといった傾向があり、特に夜間の熱中症リスクが高まる。「家族の支援や公的介護サービスだけでは補いきれない」といった人の依頼が急増しているという。

 人手不足の深刻化で介護に従事する人材は不足しており、「介護難民」を生む要因となっている。クラウドケアでは、介護職の人や経験者などがヘルパーとして登録し、スキマ時間に稼働する。子育て中などでフルタイム勤務が難しい人でも介護職を続けやすくする仕組みで、人材を確保している。

 介護は長期戦だ。クラウドサービスの担当者は「家族だけで抱え込むと、介護する人とされる人の両者にとって心身の負担になる。孤立しないことが大切」と話す。介護施設やサービスなどプロの手を借りるのも支えとなる。「必要なときに助けを求める声を上げて」と助言している。【嶋田夕子】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。