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<ある母親がカフェで撮影した映像が議論の的となっている。公共の場におけるマナーの低下を憂う声が高まる一方で、そもそも彼女の反応が過剰だとする意見も>

米ユタ州ソルトレイクシティに住む女性が、生後8カ月の息子を連れてカフェを訪れた際に会計の列に割り込まれたとTikTokで訴え、議論を呼んでいる。被害を訴えているのはアマンダ・ホリングスワースという人物で、自身のTikTokアカウント(@wildworthymama)に、カフェでの様子を記録した動画を投稿した。

■【動画】カフェで「割り込みされた」と怒る子連れ女性......被害者? わがまま? 映像を見た人の意見は真っ二つ

動画は、子供が乗っているベビーカー越しに撮影されており、彼女が数人の客の後ろに並んでいる様子が映っている。そしてその後、動画には彼女がどうやって列に割り込まれたのかを示す店内の光景が映し出される。

彼女が言うには、「最初にカフェのドアを開けたのは私」。しかし「ベビーカーでスロープを使った。ほかの人たちは階段を使った。そして気づいたら......みんなが私の前に並んでいた」という。動画は公開からすでに200万回以上再生されており、ホリングスワースが列に割り込んだ人々を非難したことで、SNS上では活発な議論が巻き起こっている。

「この動画が多くの人の心を揺さぶったのは、公平さや礼儀正しさ、公共の場でのふるまいについて大きな問題提起をしているからだと思う」と、ホリングスワースは本誌に語った。「人はそういったことをネット上で議論するのが好きなの」

以前よりマナーが低下していると考えるアメリカ人は47%

公共の場でのマナーが忘れられていると感じているのは、彼女だけではない。ピュー・リサーチ・センターが2025年に行った調査によると、アメリカの成人の47%が新型コロナウイルスのパンデミック以前と比べて、現在の公共の場での人々の振る舞いは失礼になったと感じているという。そのうち20%は「はるかに失礼になった」と答えている。

しかしこの日のカフェにいたのは、他人の失礼な行動を黙って我慢する女性ではなかった。「何日かずっと家にこもっていたから、『そろそろ気分転換しないと』と思った」と彼女は語る。「それでベビーカーを押して、ショッピングモールの近くのカフェに行った」

そして列に割り込まれたと思った彼女は、普段とは違う行動を取り、どうしても声を上げなければならないと感じたという。「カフェインが切れていたからかもしれない」

列への割り込みを注意する行為は、たとえ小さな勝利ではあっても、ホリングスワースにとって「コーヒーが問題なのではなく、勇気を出すことの象徴」だったという。出産を経て、自分の中に変化があったという彼女は話す。

「母親になってから、他人に嫌われないよう我慢するのをやめ、小さな場面であっても自分の意見を言うようになった」と彼女は話す。「(今回の動画をめぐる議論を見て)多くの母親も、正直であることや自分の居場所を求めているのだと改めて実感した」

そもそも彼女は「割り込み」をされたのか?

とはいえ彼女の主張は、すべての人から支持されたわけではなかった。動画には、「割り込みと断定するのは早計」といった指摘も寄せられた。

「もし彼らの後から別の人が来たら、その人もあなたがスロープを下りるのを待たなければならないの?」「もし私が先にドアの前にいて、ベビーカーのためにドアを押さえてあげた場合でも、階段を使って先に列に並んじゃダメってこと?」

ホリングスワース自身は、他の母親たちから寄せられた共感の声に励まされたと語る。「一番うれしかったのは、他のママたちから『私も同じ経験がある』という声が届いたこと」「こういうちょっとした出来事を共有するだけでも孤独感を和らげることができる」

結局、ホリングスワースにとって重要だったのは割り込みやマナーの問題ではなく、「日常の些細な瞬間であっても、言うべきことは言うべき」というメッセージなのだった。

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