阪神タイガースの中継などでおなじみの朝日放送テレビ・高野純一アナウンサーと、朝日新聞スポーツ部のトラ番・大坂尚子記者が定期的に語る「虎バン主義。」。今回は朝日新聞ポッドキャストで、日付上では史上最速のリーグ優勝となったチームについて語り、その一部を紙面化しました。

  • ぶっちぎり優勝支えたトラのお兄ちゃん 「一番大変」な打順での献身

 大坂 9月7日に2リーグ制後では2年ぶり7度目の優勝を遂げました。まずは藤川球児監督について語り合いましょう。解説者時代は冷静に客観的に物事を見ている印象でした。冷静さというのは監督でも変わらなかったのですが、あまり話さなくなった感じはありました。

 高野 試合後のインタビューでも、試合の細かい部分や具体的なことを多く語らず、大きな部分を藤川節で語っていた印象があります。

 大坂 優勝直前にあったスポーツ紙・一般紙向けの監督合同インタビューで、評論家は「まるで(チームの)中にいるかのように表現できる面白さがある」とした一方で、監督は「自己表現を言葉でする仕事ではない」と話していました。

 高野 采配面では1~5番は固定して、これ以上ない信頼を置きながらシーズンを進めていた一方で、それ以外は柔軟に選手を代えました。顕著だったのがブルペン陣。監督自身も状態が良い時、悪い時でも抑えてきたと思います。ただみんながそれをできるとは限らない。疲れが見えたり、パフォーマンスが落ちてきたりしたら再調整させて、状態の上がってきた2軍の選手と代える。選手について「健康な状態」だと言うことが多かったように、選手を良い状態で出す。それを繰り返したのではないでしょうか。それが藤川流のマネジメントだったと思います。

 大坂 ハートウィグ投手や6季ぶりに復帰したドリス投手は7月の加入でした。暑くなる夏場、疲れの出てくる後半戦を見据えて、ブルペンの補強に力を入れているようでした。

 高野 レフトを守れる強打者を補強しないのかなと思ったこともありますし、外国人枠の問題もある。でも「ブルペンは心臓」と言っていた通りの行動で、編成部門との共同作業ですね。岡田彰布前監督は采配で見せることもありましたが、藤川監督はグラウンドに送り出す前は緻密(ちみつ)に計算して、送り出した後は選手が活躍するのを見守る印象でした。

 大坂 共同作業といえば、石井大智投手をはじめとした独立リーグ出身選手の活躍もありました。石井投手ほど突出した成績はまだありませんが、2勝した新人の早川太貴投手は育成ドラフト3位の選手。元々は公務員で、昨季2軍に参入したくふうハヤテ出身です。阪神2軍との試合で活躍したことで、スカウトの目にとまったのではないでしょうか。

 高野 夢がありますよね。昨秋のドラフトでも独立リーグの選手が多く入り、今後が楽しみです。藤川監督も独立リーグ時代に、チームメートを見てハングリー精神や下積みの大切さを改めて感じたのかもしれません。

 大坂 コーチ経験はなくとも、大リーグから独立リーグまで幅広く見て、蓄積されたものを生かしたのでしょう。

 高野 色々な世界を見て、関西の老舗球団を変えていった部分もあると思います。シーズン中もホームでの練習ウェアの変更や、ビジターでの球場移動をジャージーにするなどもそうです。

 大坂 主力選手にも休養がありました。連続無失点記録を続けている石井投手も、休ませながらの起用。監督は「連続安打や記録はファンの皆さんが楽しむためのもので、僕たちの心の持ちようは変わらないんです」と。

 高野 良い状態であってこその記録ということでしょうね。主力を休ませられるだけの厚い選手層を作りました。

 大坂 外せないのは佐藤輝明選手の覚醒です。何が変わったというより、過去4年間で苦労したことも含めた経験から、内角球のさばき方、対応など総合的に成長したのかな。

 高野 培ってきたものが花開いて、今季、数字として分かりやすく出たのだと思います。解説者に聞いても、低めの球の見極めができるようになったと。もちろん三振は多いし、低めの変化球を振ってしまうことはあるけど、昨季までとは違います。

 大坂 高野さんは以前、阪神は「黄金時代」とおっしゃっていました。金本知憲監督(2016~18年)の頃から球団の方針も変わってきていますが、なぜ黄金時代だと思ったのですか。

 高野 金本さんが「超変革」を掲げた頃からですよね。矢野燿大監督(19~22年)の時は「超積極」をテーマに、初球から打っていく野球が身に付いた。岡田前監督は「安打と四球は同じ」という意識を選手に植え付けて幅を広げた。そうやって積み重ねて、いま、阪神は黄金時代に入ったと思っています。

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