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 8月末から行われていた、女子ラグビーワールドカップ2025イングランド大会。現地には多くの日本人サポーターが駆け付け、熱い声援が響き渡りました。そんな大舞台を戦い抜いたサクラフィフティーンのメンバーたち。チームを代表する2人に話を聞きました。
(聞き手:矢野武アナウンサー)

「今だから明かす」手応えとは

フランカー 長田(ながた)いろはキャプテンと司令塔・大塚朱紗(おおつか あやさ)  この記事の写真は4枚

 サクラフィフティーンキャプテンの長田いろは選手(フランカー)、そして司令塔スタンドオフの大塚朱紗選手です。長田選手は3度目のワールドカップでした。本当に高い目標を掲げて挑んだ今大会でしたが、ここまでの道のりはいかがでしたか?

キャプテン 長田いろは選手
「前回のニュージーランド大会よりも、もっと成長しているなっていうのはすごく感じましたし、特にフォワードでのセットピース(スクラム・ラインアウト)の安定性だったり、そういうところはすごく自分たちの自信にもつながっています」

 その意味では大塚選手もベリック・バーンズBKコーチも付きっ切りでしたよね。相当教えてもらったのでは?

スタンドオフ 大塚朱紗選手
「はい。バックスでは特にディテールにこだわるっていうところをやっていて。前回大会ではスコアを取り切るっていうところが課題になったんですけど、今回は22メートルの中に入ることと、22メートルの中(敵陣地深く)に入ったら絶対にスコアを取って帰ってくる。それができたシーンがすごくたくさんあった」

(第1戦 ●女子日本代表 14?42 女子アイルランド代表) 

 早速そのゲームから振り返っていきましょう。第1戦の対アイルランド。立ち上がりは少し主導権が握れなかった印象がありました。どう振り返りますか。

長田選手
「本当にあの入りのところでワールドカップ特有の雰囲気だったり、プレッシャーをチームとして感じてしまって、受け身のような感じになってしまった。自分たちが想像していた戦い方と違って、そこにもびっくりしました」
「ジャパンもアイルランドもキッキングゲームを強みとしていて、そういうキックを多用してくるんじゃないかなって思ったら、バックスのところでのアタックが多くて、そこにはびっくりしました」

 特に司令塔としてはそこをアジャストしてですよね?

大塚選手
「あと風が強かったっていうので、自分たちが始め前半風下に立ったので、そこでキックを使えないという判断をチームとして、そこで苦しめられたっていうのと、アイルランドは逆に風上に立っていたけど、アタックが多かったっていうところで、自分たちのディフェンスがそこに対して対応できなくて、結構ランで抜かれたシーンが多かった」

 でも、そこで修正しましたよね。ゲームの中で。その後半の手応えは?

大塚選手
「自分たちが風上に立って次はキックを多用しようっていうところをハーフタイムで話しました。そのキックを使えたことは、結構エリアも取れたと思うので、そこは良かったと思っています」

 ゲームが終わり、結果に選手たちもショックな部分もあったと思いますが、キャプテンとしてはいかがでしたか。

長田選手
「初戦が終わって涙を流してる選手も多かったんですけど、まだプール戦の1戦目っていうところで、次に切り替えていこうと話しました」
「街に行ってリフレッシュしたり、カフェに行ったり、そういうところで皆自分の時間を作ってうまく調整していましたね」

 大塚選手は犬を飼っているそうですね。

大塚選手
「キャバリアとトイ・プードルのミックスでキャバプーという種類です。名前は『アン』です」

 長田選手も飼っていますよね。

長田選手
「(大塚選手と)一緒に飼っています」 大塚選手
「一緒にアパートに住んで、そこで一緒に飼っています」

(第2戦 ●女子日本代表 19―62 女子ニュージーランド代表) 

広告 2連敗でも「次につながる戦いに」

2連敗でも「次につながる戦いに」

 第2戦のニュージーランドは優勝候補ですよね。改めて、戦っていかがでしたか。

「ブラックファーンズと戦えることが夢」 大塚選手
「前回戦ったときにすごく点差を取られて負けましたけど、ブラックファーンズと戦えることが夢で」
「今回は相手を大きく見ずに、でもリスペクトを持って戦おうということは決めていました」

 びっくりしたのが立ち上がり、いきなり30秒くらいでフルバック西村蒼空(にしむら そら)選手がけがで退場。スタンドオフ山本実(やまもと みのり)選手が入ってきましたが、フルバックにポジションチェンジをした大塚選手も大変だったのでは?

大塚選手
「フルバックも一応練習はしてたんですけど、あんなに長くプレーするとは思ってなかったですね」

 山本選手とは何を話したんですか?

大塚選手
「とにかくコミュニケーション取って、ゲームマネジメントを一緒にやっていこうと話しました」

 ダブルスタンドオフ的なイメージだったんですね。

大塚選手
「はい。実さんが例えばラックに入ったり、オープンを待つ時に私は逆サイドでマネジメントをしたりとか。2人いるのは、私としても心強いです」

 前半も最初にトライで先制して。後半も立ち上がり最初にトライを取れて。まず得点が取れるという感じがあったんでしょうね。

大塚選手
「そうですね、やはりアイルランド戦からの修正として入りを良くしようというところは、チームとして課題に上がったところなので。その意識があったからこそ、ファーストトライが取れたと思っています」

 それがあったから、例えばアクシデントがあっても一つになろう、やること決まっているよね、ということだったんですね。でも、さすが、ニュージーランドでしたね。

長田選手
「そうですね」

 同じ番号の6番がいて。ものすごい…。

長田選手
「ジョージャ・ミラー選手。セブンスのときから活躍は見ていてすごく対戦するのを楽しみにしていました。実際に見てみると本当にバックス並みの足の速さとキレキレなステップで。すごかったです」

 ある意味憧れというか、そういう選手たちと戦える場所でもあるんですね。

(第3戦 ○女子日本代表 29―21 女子スペイン代表) 

 第3戦のスペイン戦の前にベスト8・決勝トーナメントに行けないというのは分かった状態でしたが…。

長田選手
「チームとして目標達成できなかったっていうのはすごく皆悔しい気持ちでした。ただ、最後の試合、スペイン戦は次につながる戦いにしようと私からも話しましたし、皆もそう思って準備して戦ってくれたので、勝利につながったと思います」

 前半リードされて、後半キャプテンのトライから始まって。肩が大丈夫かなというぐらいの位置に曲がっていましたよね?

長田選手
「びっくりしました。自分でも肩いったかなと思って」
「脱臼したかなと思って痛がっていたんですけど、意外にいけて、すくって立ち上がって。うれしそうに。最初は痛がっていたんですけど」 広告 「周りにできる人がいるから、それを任せて」

「周りにできる人がいるから、それを任せて」

 改めてスペイン代表から勝利を挙げて、これ2大会ぶりの勝利になりましたね。2大会前は順位決定戦で最後の試合でしたが、意味合いがまた違いますね(1994年大会以来31年ぶりの勝利)。

「3年間積み上げてきたものを出せた」 長田選手
「2大会前は香港に勝って終われたんですけど、今回はプール戦でスペイン相手。プール戦で勝つというのもすごく大きな意味があって。3年間積み上げてきたものを出せたかなと」

 トライを取る方法が一つ確立されました。モールで取り切るシーンありましたね。

長田選手
「モールもずっと練習で合宿で積み上げてきたものがあって、そこも自分たちの強みだったので、そこでしっかりモール組んでペナルティ取って、朱紗(大塚選手)がキック蹴って、また進んで22メートルに入って。そこでまたモール組んで、スコアを取り切るという一つの流れは意識してやっていました」

 敵陣深くでラインアウトのためには、キックでエリア進めないといけないですよね。

大塚選手
「そこのタッチキックっていうのは本当に重要になると思うので、練習から本番をイメージして取り組むことはできました」

 キャプテンとしてずっと臨んできたこの大会、苦しかった・うれしかったことは?

長田選手
「チームのキャプテンになって最初の2年間は、接戦で勝ち切れないことがすごく多くて苦しいシーズンだったんですけど、今年に入ってからはチームの皆の努力だったり、スタッフ陣の努力だったり、私も私らしく、助けてもらいながらキャプテンをできたので。本当に皆に感謝しています」

 大塚選手は近くで見ていて、大変なことも感じていたでしょうね。

大塚選手
「前回キャプテンだった早紀さん(南早紀(みなみ さき)選手)は言葉や背中で、すごくリーダーシップがあったんですけど、逆に長田選手は言葉をかけるのがなかなかうまくいかなかった。周りにできる人がいるから、それを任せて背中で引っ張っていけばいいと言いました」

 まさに「私らしく」とつながりますね。

長田選手
「最初の方は、早紀ちゃんの真似してもうまくいかなかったので。レスリー・マッケンジーヘッドコーチや朱紗と話しながら今のキャプテンスタイルを作り上げていきました」

次世代のリーダーは?

次回は2029年 代表に向けて…

 次が2029年のオーストラリア大会になります。長田選手は代表に向けて気持ちはいかがですか?

長田選手
「ワールドカップにかけてきた思いもあって、まだ気持ちの整理はついてないんですけど、今から考えて決めていきたいと思っています」

 大塚選手はいかがでしょう?

大塚選手
「私も長田選手と同じで、まだ今後のことについては何もまだはっきり決まってないかなと」

 先の先の話でもいいですけど、「こういうことやってみたいな」ということは?

大塚選手
「私はずっと家にいても良いっていうぐらいのインドアなんですけど、最近は愛犬も飼い始めて結構外に出るようになって、ショッピングもするようになって。アクティブになったんですけど、今めっちゃラグビーで動いて本当にハードな日々だったので、将来は何にもしない生活したいなって」 長田選手
「ヤバいやろ(笑)」

 キャプテンはいかがですか?

長田選手
「私は動きたい!新しいことをやりたいですね。ラグビーじゃない、関係のない違うスポーツをやってみたい」 広告 サクラの誇りと共に未来へ

サクラの誇りと共に未来へ

 次の2029年サクラフィフティーンはまた来年春から始動でしょうか。今回のワールドカップで感じたこと、これから強化したいことは。

長田選手
「ディテールにこだわって。アタックでは特に22メートル入ったときの得点力、決定力をもっと強化した方がいいと思います」

 大塚選手はどうですか?

大塚選手
「ここ一区切りついて、また新しいメンバーにはなるんですけど、そこのところでまた一からじゃなくて、積み上げてきたものをどんどん土台にして積み上げていってほしいと思っています」

 それを経験した20代前半の選手たちは重要ですよね。特にリーダーとして引っ張ってほしいと期待している選手は?

長田選手
「向來桜子(こうらい さくらこ)選手がリーダーシップもあって、プレーでもすごく成長していると思うので、そこは向來に期待しています」

 大塚選手はどうですか?

大塚選手
「私は松村美咲(まつむら みさき)選手。代表に初めに入ってきた時からずっと一緒にプレーしていて、入ってきた当初は他の先輩選手に聞き難いことがあるとは思うんですけど、自分に吸収できるものは何でも持っていこうという選手で。まだまだ本当に成長する選手だと思うので、期待しています」

では最後に、応援してくれたラグビーファンの皆さんにぜひ一言メッセージをお願いします。

長田選手
「今回のワールドカップでの現地での応援、またテレビの前での応援ありがとうございました。皆様の応援が本当に力になりましたし、元気をもらいました。今回ベスト8以上という目標を達成することはできませんでしたが、チームとしては本当に着実にレベルアップしていますので、今後のサクラフィフティーンも応援していただけるとうれしいです。ありがとうございます」 大塚選手
「まずはたくさんの応援ありがとうございました。私たちが目標としていたベスト8以上というところには届かなくて残念ですが、プール戦で最後勝利という形で終われたことは将来のサクラフィフティーンにつながるものになったと思っています。これからもサクラフィフティーンの活動は続きますので、引き続き応援よろしくお願いいたします」 ■ラグビーウィークリー ■ラグビー日本代表 試合スケジュール 広告

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