自身の快投でリーグ優勝をもたらした2年前のように、いや、それ以上に阪神・村上頌樹のピッチングは力強さが増した。

 今季はセ・リーグの最多勝、最多奪三振、勝率第1位と3冠を獲得。躍進の裏には「今年はやり返す」という強い決意があった。

 昨季は7勝11敗と負けが込んだ。防御率は2点台と悪くなかったが、「セ・リーグで一番負けの数が多かった」。チームを勝ちに導く投球ができなかったことが何より嫌だった。

 2025年のシーズンを迎えるにあたり、直球の質や変化球の精度といった技術的な部分はもちろん見直した。さらに、「昨季は投げ急いだ部分もあった」と反省し、より慎重かつ大胆な投球を心がけた。

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 プロ5年目で初めて開幕投手を任され、九回2死まで好投して白星を手にした。良いスタートを切れたことで、精神的にも楽になった。

 先発投手に求められる大事な指標であるクオリティースタート(先発して6イニング以上を投げ、かつ自責点が3点以内)の試合は、22試合とリーグトップ。開幕戦に加え、レギュラーシーズン最終戦も任されるなど、藤川球児監督からの信頼も厚い。

 そして何より、競い合う存在がチーム内にいることは大きい。

 才木浩人だ。

 防御率1.55でセ・リーグの最優秀防御率に輝いた才木と村上は、同じ兵庫県出身で、1998年生まれの同学年。普段から一緒にキャッチボールをする。

 189センチの長身から投げ下ろす150キロ台後半の直球が売りの才木は、右ひじのケガから本格復帰した一昨年は8勝、昨季はリーグ2位タイの13勝、今季も12勝と安定した成績を残す。「ピンチでも粘り強くて、なかなか点を取られないのはすごい」と、村上も一目置く。

 昨季のクライマックスシリーズ(CS)、才木は第1Sの第1戦に登板し、先制を許して負け投手になった。村上は第2戦で2番手で登板して、3失点。相手の勢いにのまれた。

 先発投手のタイトルを2人で独占した今季、「(先発として)僕と村上で、チームを支えてこられた」と才木が言えば、村上も「エースが2人いるのは強い証拠」と言う。

 阪神の「Wエース」雪辱のCSへ、機は熟した。

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