(14日、大リーグ、ナショナル・リーグ優勝決定戦第2戦 ドジャース5―1ブルワーズ)

 ドジャースの山本由伸は一回、初球をいきなり右翼席へ運ばれた。

 ミルウォーキーは、山本が7月に渡米後自己最短の一回途中5失点でノックアウトされた忌まわしい場所だ。だが、ブルワーズファンが湧いたのはこの時だけだった。

  • ドジャースが2連勝 山本由伸が3安打1失点完投 大谷翔平に適時打
  • あの先人が名を刻んで30年 ドジャースを彩るアジア人大リーガー

 山本は腕を振る。後続3人を内野ゴロで仕留めてこの回を終えると、味方打線が直後の二回に逆転してくれた。

 山本も乗った。速球と変わらない腕の振りから放つスプリットで、カーブで。凡打の山を築いていく。中盤までは、2―1のまま投手戦が続いたが、ドジャースのブルペンでは誰も肩を作る気配がなかった。

 八回を投げ終えて97球。山本は大リーグで自身初の完投をめざして九回もマウンドに上がった。

 「締めくくるつもりで投げた」。力むことなく冷静に打者と駆け引きした。

 九回は投じた14球のうち13球が変化球。最後の打者を空振り三振に仕留め、チームに5―1で勝利をもたらすと、控えめに笑みをこぼした。

 前回登板となったフィリーズとの地区シリーズ第3戦では四回に本塁打を浴びてから突然崩れ、負け投手になった。

 「前回も感覚が悪かったわけではない。しっかり練習してマウンドに上がれたので自信があった」

 嫌な記憶を全て書き換える、精神力の強さをみせた111球の完投劇だった。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。