東京六大学野球の秋季リーグ戦は28日、3回戦1試合が神宮であり、法大が東大に大勝。ヤクルトからドラフト1位で指名された法大の3番、松下歩叶(4年、桐蔭学園)が1本塁打を含む4安打4打点の活躍。東大は8年ぶりの勝ち点を逃した。

  • 東大エースを見守った 元プロ野球選手の父の心情

涙の取材ルーム 元プロの父もたたえた4年間

 東大のエース、渡辺向輝(4年、海城)は4点を追う四回、3番手でマウンドに上がった。2死一、三塁のピンチを招いた。ヤクルトからドラフト1位指名を受けた松下歩叶(4年、桐蔭学園)に対し、内角の直球で三振を奪い、仲間と喜びあった。

 集大成となる大学最後の公式戦は、2回3分の1を投げて自責点4。試合後の取材ルームでは、頰に涙が伝った。今季は2勝に貢献した。「今日を境に(野球生活が)終わるのが寂しい」。報道陣の問いかけに、泣きながら答えた。

 父は元ロッテで「ミスターサブマリン」と呼ばれた渡辺俊介さん(49)だ。小さい頃は、「野球選手の息子」とみなされるのが嫌だった。

 東大に勝ち点をもたらそうと真剣に考え、父と同じアンダースローに本格的に取り組み始めた。周囲から「自分を一人の人間として認めさせたい」と、俊介さんと競争してきたつもりだ。「ドラフト指名が無かったら野球に区切りをつける」とプロ志望届を提出。夢はかなわなかった。

 アンダースローについて「野球人生が変わったと思います」。レベルの高い選手や強豪を想定して考え、実践して向かっていく気持ちが養われた。「想像もつかないような高いレベルで野球ができた」と後悔はない。

 球場を訪れた父の俊介さんは試合後の取材に応じ、「人間的に成長できる場になった。4年間やってきてくれてよかった」。言葉には、同じ野球人に対するリスペクトがこもっていた。

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