来年3月の「ワールド・ベースボール・クラシック」(WBC)開幕を前に、韓国との強化試合(15日、16日、東京ドーム)に臨む侍ジャパン。初のWBC代表入りへ、右の強打者、森下翔太(25、阪神)が課題と語るのは「ホームラン」だ。共に阪神でクリーンナップを担い、キャリアハイとなる40本塁打を放った4番・佐藤輝明(26)を間近で見てきた森下が、その活躍の側と、自身のプランを語った。(聞き手 元日本ハム・杉谷拳士さん)

WBCに出てほしい国内組の選手1位

杉谷拳士さん:今回、番組企画としまして、侍ジャパン日本代表に関するアンケートを取らせていただきました。「国内組でWBCに出てほしい選手は?」ということで、森下選手が見事1位。

森下翔太選手:え、本当ですか?いや、普通に驚いてます。

杉谷さん:100人以上のファンの方たちから、森下選手は圧倒的支持を集めた。

森下選手:今までWBCに出てる選手もいる中で、そういう票を集められたっていうことは、びっくりしますけど、嬉しいですね。

杉谷さん:ファンの方も井端弘和監督も、森下選手の「勝負強さ」を評価しているみたいなんですけど、ご自身はその「勝負強さ」についてはいかがですか。

森下選手:タイガースのときは、近本(光司)さん、(中野)拓夢さんがかき乱してくれるので、やりやすい環境はすごくありますけど、侍ジャパンは自分の打撃に集中するために、他のことや余計なことを考えないようにしてる。それがいい結果に繋がってるのかなと思ってます。

杉谷さん:チャンスのときは何を考えてるんですか。僕は「打ってやろう」とか、「この球種を狙ってやろう」とか、やっぱりそういう気持ちになって、前のめりになってしまうタイプだったんです。それで良い結果につながらないんですけど、森下選手は、打席の中でよりクリアになってるような印象をすごく受ける。「この狙い球打ちに行ったな」「しっかり高めを狙いにいって犠飛を打ちにいっているな」とか。

森下選手:1ストライク、2ストライクで変えてる部分はありますけど、大体は自分のタイミングだけを意識して、タイミングが合うと思えば、多少の高めだったり低めだったりも手を出しますし。タイミングに合ってないと思ったときに、見逃すというのをやってるんで。

杉谷さん:うわ~現役時代に教えて欲しかった。

森下選手:いやもう逆にそれ以上考えちゃうと、空回りするっていう。状況に応じたバッティングをしようと思えば思うほど、体が動かなくて。手が動くと、エラー動作というか自分の中で良くない動作が起きやすい。手は不安定なので。体幹部だったり身体を動かすには余計なことを考えない方がいつもの動きができるので、意識してます。

杉谷さん:打撃の状態が良くないときは手が主動になっている・・・ちゃんと自分のバッティングが悪くなったとこを見つめ直せてるんだね。

森下選手:試合中でも、チャンス、チャンスじゃない関係なしに、自分の中で修正は一試合ごとにずっとやってますね。

侍ジャパンの“熾烈な外野争い”

杉谷さん:侍ジャパンの熾烈な外野争いに注目してる。初めて見たんですけど、(練習で)センターの守備についていましたね。あれはどういった経緯なんですか。

杉谷さんと森下選手

森下選手:どこでも守れるっていう強みを持っておけば、安心して監督も選手を送り出せると思う。その中で自分もセンターをできた方が使いやすくなると思うので。

杉谷さん:井端監督に言われたわけではなく?

森下選手:言われましたけど、そういうことはあるんじゃないかなっていうのは頭にありましたね。

杉谷さん:実際守ってみていかがですか?今まで両翼が多かったけど、センターは。

森下選手:守備範囲はとにかく広いですね。一歩目がより大事なポジションだなっていうのは、この(宮崎)合宿を通して思ってます。

杉谷さん:タイガースはどうかわかんないけど、相手のバッターによってセンターを中心にポジショニングって変わっていくじゃないですか。森下選手もセンターの近本選手を見ながら、変わっていた部分はありました?

森下選手:多少はありましたけど、今年は特に自分の意思で動くようにしてて。その結果守備指標というのも上がりましたし、自分の意思で、感覚で、っていうのは、結構自分の中で大事にしてる部分かもしれないです。

杉谷さん:外野争いということも踏まえて、(左打ちの外野手に)近藤健介選手(ソフトバンク)、ラーズ・ヌートバー選手(カージナルス)、吉田正尚選手(レッドソックス)がいるなかで、「右打ちの外野手」というのは、ご自身ではどう捉えてますか。

森下選手:巡り合わせじゃないですけど、そういう「左」の外野が多い中の「右」っていうのも絶対必要になるのかなって思うので、どんどん右バッターとしてのアピールはしていきたいなと思います。

同じ“右打ち外野手”鈴木誠也との接点は「ケツをポンッ」

杉谷さん:鈴木誠也選手(カブス)との接点は何かあったりするんですか?右投げ右打ちの外野手ってことで、何か重なる部分があるんですよね。「森下くんも誠也みたいになっていくのかな」と思いながら。

森下選手:接点は全然ないですけど、(今年3月に行われたMLB東京シリーズで)カブスとタイガースで試合をやったときに、たまたま廊下か何かですれ違って、ケツをポンッて叩かれたのは覚えてます(笑)「知ってくれてるのかな」ってちょっと嬉しくなりました(笑)

杉谷さん:嬉しかったですか?(笑)子どものような顔になってる(笑)

森下選手:自分もやっぱり意識するというか。長打も打てて、守備もできて、走れてっていう三拍子揃った選手は、自分の理想の形でもあるので、すごく参考にさせてもらってます。

杉谷さん:今季143試合に出場して(打率.275、キャリアハイの23本塁打、89打点)、リーグ優勝。チームとしての成績も踏まえて、今回侍ジャパンにもちろん選ばれると思ってるんですけど、この今年1年の成績を侍ジャパンにどう活かしていきたいですか。

森下選手

森下選手:オフシーズンからやってきたことがシーズンに出ると思っているので、そういう意味ではキャリアハイを多く残すことができて、やってきたことは間違いじゃなかったっていうことを改めて感じました。自分の中で本戦は3月、合宿は2月からだとしたら、それまでにもレベルアップできるチャンスって思ってるんで、現状維持では行かないですWBCは。もっと自信をつけて、もっと自分の中でパワーアップして、挑みたいなと思ってます。

テルさんは「いきなり良くなったわけじゃなくて…」

杉谷さん:その3月に向けて、課題はありますか。

森下選手:シーズン通して見て、ホームランじゃないですかね。テル(今季40HRの佐藤輝明)さんを目の前で見てたっていうのもありますけど、「これいっちゃう?」とか、「もう完璧」とかそういうのを目の当たりにしてたんで。ホームランは、流れを変えるし、ロマンがあるというか憧れるものがあるんで、自分の今の課題はそこじゃないかなと思ってます。やっぱ甲子園のあの広いところで、風もある中の40本っていうのは・・・

杉谷さん:ちょっと考えられないよね、逆風切り裂いてたもんね。

森下選手:レベルがすごいなっていうのはあったんですけど、その反面悔しいなっていうところもありました。テルさんが打って、もちろんチームとして嬉しいですけど、個人で見たら悔しいなっていう気持ちもあったんで。「もっとやれる」って思いましたし、いい“ライバル関係”かはわかんないですけど、すごく身近にいい選手がいてくれてありがたいなっていうのは感じてます。

杉谷さんと森下選手

杉谷さん:意識する存在になってるってことですね。テルのあの片手のやつとかなんなの?(笑)あの子は何を変えたの。

森下選手:多分今までやってきたことがあったんですよ。(これまでは)その完成形っていうのはまだちょっと遠かったんですよ。いきなりボンとはできないんで、テルさん自身も目指してるところがある中の途中経過が今までだったんです。多分8割9割完成の状態で、今年を迎えたんで。

杉谷さん:突然良くなったっていうよりは、継続的にやってたのを8割9割の出力になってきたってことなのかな。

森下選手:そうなんですよ。多分自分の体が覚えてきたんですよね。「こうやるんだ」っていうことにパンって気づけた。だから本当にいきなり良くなったわけじゃなくて、テルさんも自主トレでとことんやり切って、多分今のこの成績があるんで。この成績は来年も続くと思います。多分、今年だけ良いっていうのはないかなっていう。

杉谷さん:逆に森下くんはどうなの?

森下選手:自分はどっちかっていうと、テルさんの過程の部分ですよね。だから、確実にキャリアハイを残して成長はできてるし、感覚としても成長できてるなって思いますけど、目標とする部分だったり、もっとできる部分はまだ先ですね。だから後退することは、逆にないというか。

杉谷さん:毎年キャリアハイを重ねていけるような・・・

森下選手:っていう自分の想定というか、イメージはすごいはっきりできますね。

杉谷さん:超楽しみなんだけど!(笑)

森下選手:同じ練習をしようと思ってないんで。もう圧倒的に全然違う形のアプローチをしようと思ってる。本当に、打たないとつまらないんで、野球(笑)全然打てないんで、もっともっと打ちたいです。

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