全国各地で部活動の改革が進む。先生の負担をどう減らすのか。部活がなくなったときに子どもたちにとっての居場所がなくなってしまわないか。それ以外の課題も地域に応じて様々だ。先行する神戸市で改革の検討委員を務める中学校長・守田智昭さんと、民間の立場で部活改革の課題への支援や情報発信をしてきた「イマチャレ」製作委員長・佐藤壮二郎さんが、教員向けサイト「先生コネクト」のオンラインセミナーで現状と未来について語り合った。

 2人は共に、改革が必要な理由を、先生の負担を減らすため▼少子化により、学校単位ではスポーツ活動を続けられなくなるため▼競技力向上よりも楽しみたい、複数の活動を掛け持ちしたいといった多様になっている価値観に応えるためだと整理した。

 神戸市では来年9月から、一部をのぞいて部活をなくす。代わりに、生徒が地域にある活動を自由に選んで参加する「コベカツ」が始まる。準備に関わってきた守田さんは、「先生の放課後は変わる」。授業改善に向けた教材研究などの教員本来の業務に時間を使ってもらいたいという。

 学校施設の開け閉めや、トラブルや事故などの初期対応は原則、クラブが担う。指導者は、体罰やハラスメント、熱中症などの事故予防の研修を受けることになる。

 その際の教員の役割について、守田さんは「コベカツも習い事も含め放課後に何もしないような子どものやりたいことは何か。子どもと向き合いながら探していく。そこには、我々教員がきっちり関わっていきたい」。

 大会運営は誰が担うのか。佐藤さんは「大会の姿を見直す議論は避けて通れない」。あらゆる競技が一年中、何かしらの大会をするようなかたちを変えて、競技を季節ごとに分けて大会を開くなど、地域でスポーツ全体の大会の数を見直す方法を勧める。先生が担っていた大会運営を、競技団体の関係者を中心に、地域の住民や企業の協力によって支えられないかという模索も始まっている。

 指導者がいない、クラブが近くにないという地域も出てくる。佐藤さんは改革が滞る例として「今までの部活をそのまま引き継いでくれる事業者を探そうとするケース」を挙げる。

 週に5日も6日も活動し、平日は午後4時から指導して、多数の大会にも引率をする仕事に、引き受け手はいない。そこで、形を変えることを提案する。「中学校の年間の全授業時間に対し、部活動でそれに近い1千時間を超えるところもある。スポーツの拘束時間としては、世界的に見ても長すぎた」。例えば、週1回の活動を見守るだけなら、担い手が出てくるという。

 神戸市では、料理、農業、ボランティアなどをするクラブもある。「こんな活動ならお手伝いできますよ」という住民と、生徒のニーズを聞いてできた。

 2人は、部活がなくなった場合でも、それまでとは違った教育的な意義があると考えている。守田さんは「学校以外の世界との出会いに価値がある」。佐藤さんは「地域の住民や企業も一緒になって、みんなで子どもにかかわる新たなかたちを作れるといい」。

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