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 高校野球・夏の甲子園は、23日に決勝を迎えましたが、敗れたチームの中には特別な思いを持って戦った球児たちがいました。

憧れのユニホームをまとって

智弁和歌山キャプテン 山田希翔選手 選手宣誓
「私たちは人々の心に大きな感動を届けたいと思います」

 智弁和歌山キャプテン・山田希翔選手(3年)。このユニホームには特別な思いがありました。

智弁和歌山 山田希翔選手 この記事の写真は9枚 山田選手
「星稜と試合をやっていた時に、小学生のチームが見るドリームシートで見させてもらって感動した」 小学6年生だった山田選手は最前列で観戦

 6年前、夏の甲子園3回戦。石川・星稜と智弁和歌山の一戦。当時、小学6年生だった山田選手は最前列で観戦していました。

 試合は延長14回に及ぶ激闘の末、勝ったのは星稜。ただ、山田少年の心を打ったのは…。

「かっこいい、憧れ」 「智弁和歌山の方が全員の思いを感じた。かっこいいなというか、憧れみたいなのがあって。智弁和歌山に行きたい」

 努力を積み重ね、智弁和歌山に入学すると、2年生でショートのレギュラーを獲得します。

 しかし、キャプテンに就任した矢先の大ケガ。

「右肩を脱臼して手術」

 レギュラーの座は譲りますが、夏への思いは何1つ変わりませんでした。

「全員が同じ方向を向いてプレーできた」 「日本一を取るために全員で頑張ろうと常に言って、全員が同じ方向を向いてプレーできたかなと思います」

 再び、甲子園に帰ってきた山田選手。迎えた岩手・花巻東との初戦。

実況
「痛烈な打球!智弁和歌山、鮮やか先制攻撃」

 役割は3塁コーチャー。伝令としてもチームを鼓舞します。

実況
「三振!」

 試合は4対1で花巻東の勝利。智弁和歌山は初戦敗退となりましたが、6年前に見た、憧れのユニホームでキャプテンを全うしました。

「ずっと憧れていた智弁和歌山でたくさんの人に支えられて、キャプテンもやらせてもらって、感謝の気持ちでいっぱいです」 広告 2つのチームで目指した聖地

2つのチームで目指した聖地

弘前学院聖愛 成田翔音選手、菅野裕眞選手、奈良文翔選手

 青森代表、弘前学院聖愛。この中に去年違う学校から、甲子園を目指していた選手がいるんです。それが、成田翔音選手(3年)、菅野裕眞選手(3年)、奈良文翔選手(3年)です。

成田選手
「柏木農業高校でプレーしていました。部長から『柏木農業が人数足りなくて試合に出られない』」 去年の夏3人がプレーしたのは柏木農業

 去年の夏3人がプレーしたのは、隣町にある柏木農業。実は、部員が9人に満たない学校は10人になるまで他校から選手を借りることができるんです。

 この制度により、連合チームが組めない場合でも単独で公式戦出場が可能に。3人は部員7人だった柏木農業の選手として2年生の夏を戦いました。

ヒロド歩美キャスター
どういう思いで立候補しましたか? 菅野選手
「弘前学院聖愛ではベンチにもなかなか入れなかったので、『試合を経験できるなら、ぜひ柏木農業で夏の大会を経験しよう』と」

 4月から夏の大会までの間、柏木農業で休日を中心に練習を行ってきました。

 去年の青森大会。3人は柏木農業の中心選手として活躍。敗れはしたものの延長までもつれた大熱戦でした。

 あれから1年。今度は弘前学院聖愛として臨んだ最後の夏。去年の経験が甲子園出場に大きく影響したといいます。

「1点差のゲームで冷静に判断できた」 成田選手
「(去年)緊張感や夏の雰囲気を味わえたので、(今年青森大会の)1点差のゲームで冷静に判断できた」

 そして今年3人は念願の甲子園へ。

 菅野選手がいきなり盗塁を決めると、成田選手がタイムリー!柏木農業で経験を積んだ選手たちが弘前学院聖愛を引っ張りました。

 この試合を現地で見守っていたのが去年、柏木農業のキャプテンだった村田公王樹さんです。

村田公王樹さん 村田さん
「一緒にやっていたメンバーが活躍して甲子園に出るなんて、すごくうれしかったし、一緒に野球ができて幸せ」

 現在、大学で教員、そして、野球の指導者を目指している村田さん。3人との出会いで人生が変わったといいます。

「最初は高校を卒業して就職する予定だったんですけど、聖愛の3人に野球を教えてもらって、今度は教える側になって野球の楽しさやスポーツのすばらしさを子どもたちに教えたい」 「プラスでしかないいい制度」 ヒロドキャスター
「この制度についてどう思いますか?」 成田選手
「人数が足りないチームが増えているなかで、ベンチに入れない人は経験しておいた方が今後に生きる。どちらにとってもプラスでしかないいい制度だと思います」

白球を追いかけた球児の夏

ヒロドキャスター
「聖愛の奈良選手が教えてくれたんですが、元々卓球部でフライをとることができなかった選手がいたんですが、その選手を自分たちが教えていくなかで最後の試合でフライをとった。この瞬間が本当にうれしかったと振り返ってくれました。一方の村田さんは、野球の技術だけではなくて、野球に向き合う態度も学ぶことができたんです、と話していました。今回のこの制度もそうですし、智弁和歌山の山田キャプテンが座っていたドリームシートもですが、野球人口減少が危惧されるなかで非常に大きな取り組みになるのかなと取材を通して思いました」 大越健介キャスター
「経験する機会が増えるのはいいことですし、そういう機会を作るのは大人の役割ですから、そういう取り組みを増やしてほしいですね」 ヒロドキャスター
「高校球児の数だけドラマがあるというのをこの取材を通して感じました」

(「報道ステーション」2025年8月22日放送分より)

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