今年、日本人として初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたイチローさん(52、マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が24、25日の2日間、九州国際大付属高校(九州国際大付、福岡)の指導に訪れた。8、9日の中越高校(新潟)に続き今年2校目で、通算12校目の訪問。神宮大会を制した“日本一”のチームで、自身の打撃の極意を語った。

「日本一のチーム、俺いらないでしょ」

九州国際大付は夏の甲子園に10度、センバツは3度出場の強豪校。今年の夏は、福岡県大会の決勝で西日本短大付属に敗れ甲子園出場はならなかったが、新チームとなった秋の大会では4年ぶりに九州王者に。19日に行われた神宮大会では初優勝を飾った。

神宮大会優勝から5日、現在最も勢いのあるチームにイチローさんが指導に訪れた。緊張の面持ちで待つ球児たちと対面したイチローさんの第一声は祝福の言葉だった。

部員と対面

イチロー:皆さん初めましてイチローです。まずは秋の福岡県大会、九州大会優勝、つまり甲子園確定、さらには神宮大会優勝、おめでとうございます。つまり日本一強いってことでしょ。現段階で日本一のチーム、俺いらないでしょ(笑)…そこは首を横に振っておいてください(笑)縦はないけど、横に欲しいね(笑)

そして、12校目の訪問先に決めた理由を次のように語った。

イチロー:1、2年生からの手紙をいただきました。日々、甲子園を目指して頑張っていると。もちろん九国のみんな、レベルが高いだろうし。そもそもね、僕がいなくたって今こうなってるわけで、果たして訪ねていいものか迷ったし、僕のスタンスは今までとちょっと違って、この状態のチームと接するの、初めてです。僕が勉強しに来たというスタンスです。日本一のチーム、秋の日本一のチーム、高校生たちがどんなレベルなのか、知りたいなってすごく思って。僕の動きを直接見て学びたいと、そういう声がたくさんありました。

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しかし今回、球児指導12回目にしてイチローさんに初めてのアクシデントが・・・。

牟禮翔選手

イチロー:これくらいの距離(30m)はここ(胸の位置)で安定して投げたいよね。体の使い方を工夫して。

牟禮からシュート回転した送球が来ると・・・。

イチロー:これはダメよ。それは自分で何となくわかる?こっち(右)とこっち(左)の違いは。それは感じてて。上下でブレるのはいいけど、こっち(左右)にブレたくない。これは(上下)は全然かまわない。

キャッチボールが終わると・・・。

イチロー:肩強そうだね。やっぱり気になるのはこっち(シュート回転する)軌道ね。外野の送球はそれだけで違うので。このレベルだったら塁間、30mくらいの距離は必ずここ(胸)、もしくはこっち(左、捕球者の右胸)。今の精度だとまだまだ。(肩が)強いのはわかる。

イチロー:(他の選手に向かって)今みたいな感じ?牟禮選手はキャッチボールでちょっとブレる?

選手たち:はい。

イチロー:そうね。それは必ず体の動きに理由がある。「こうなったときはこういう軌道」っていうのが分かれば修正できる。分からないと何となくやっているだけだから、いい時があったり悪い時があったり(する)。それではね、やっぱりレベルが上がると使えないから。能力が高いのは良くわかる。どうだった僕のは?

牟禮:伸びがエグいです。

イチロー:落ちてこない感触があるかな?そこそこ(力を)入れているけどそう見えない。「肩甲骨が動く」がポイントだね。あれが7割くらいずっとできる能力が欲しいね。

牟禮:はい!

イチロー:全然、全力じゃなくていいよ。普段も7割くらいで(送球が)スーッと行く、それができる能力はあると思うので、それを目指そうか。

牟禮:ありがとうございます。

「なんでこれができているんだろう?」

外野の守備練習の指導で伝えたのは、“止まって判断すること”の大切さ。

イチロー:一旦、止まるということをやってみる。止まって(打球)判断するとどれくらい判断が正確になって、早くなるのか、簡単になるのかっていうのを覚えてほしい。ノックでも(止まる)体勢を作ってから判断して、それでやってみようか。感触を得てみて。

イチローさんと牟禮翔選手

イチローさんは打撃を終えると、牟禮選手に自身のバットを差し出した。

イチロー:これ使ってみて、これアッシュだから。

牟禮:折れてもいいですか?

イチロー:折れてもいい、全然大丈夫、使ってみて。

イチローさんのバットを借りて、打撃練習を行った牟禮選手。1スイング目でしっかりとボールを捉えたが、3スイング目で・・・。

牟禮:あっ、やばい。

イチロー:ハッハッハッ、折れた。折れてない?

牟禮:いや、折れました。

イチロー:折れた、OK、大丈夫、大丈夫。

牟禮:すみません。

イチロー:そういうこともありますから(笑)大丈夫です。

その後はバットを折ることなく打撃練習が無事に終了した。

イチロー:どう?感触?違いはわかる?

牟禮:感触というか、芯に当たった時なんですけど、なんていうんですかね、ポーンと。

イチロー:張り付く感じ?

牟禮:そうです。そうです。

イチロー:あるでしょう。その感じが好きな人はこっち(アッシュ)の方がいい。

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