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「SoftBank ウインターカップ2025」の男子2回戦、正智深谷高校(埼玉県)と初出場の山梨学院高校(山梨県)との対戦が12月25日、東京体育館で行われ、正智深谷が3回戦に駒を進めた(正智深谷 87-82 山梨学院)

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立ちはだかる「高さの壁」と食らいつく意地

第1Qの序盤。正智深谷は、留学生らがコートに立つ山梨学院の高さに苦しめられる展開が続き、なかなか流れをつかみきれない。早船哉斗選手(3年生)の3ポイントや大木来唄(おおきこうた)選手(2年生)のエンドワンで食らいつくも7点差をつけられ、第1Qを終える(15-22)。

正智深谷の早船哉斗選手(3年生)

第2Qに入ると、正智深谷のスラッシャー山口哲平選手(3年生)がドリブルからのカットインでファウルをもらいフリースローを2本とも沈めて、上々の立ち上がりをみせる。

正智深谷の山口哲平選手(3年生) 山口哲平選手(3年生)
「1回戦では自分たちの力強さと速さが出せていなかった。今日はそれを体現しようと思った」

その言葉通り、鋭いドリブルで敵陣を切り裂き、停滞していたオフェンスに火をつける。彼が強気にアタックできた背景には、チームメイトへの信頼があった。

山口哲平選手(3年生)
「自分の持ち味であるドライブからのジャンパーやレイアップでリズムを作れば、良いシューターが2人(加藤、早船)いる。だから自信を持って切り込めました」

そしてもう一つ、彼を突き動かした原動力がある。それは指揮官からの叱咤だ。

山口哲平選手(3年生)
「成田監督から『臆病』と言われているので……。絶対にそう言われないようにしようと思って(笑)」

「臆病」の殻を破った正智深谷6番の躍動が、チームに勢いをもたらした。

そして、大木選手のパスカットからエース加藤駿選手(3年生)につないだ速攻。このプレーで試合の流れを正智深谷がつかむと、加藤選手が気迫で沈め2点差に(24‐26)。
勢いに乗った加藤選手は、チームの特徴であるディフェンスから速攻をしかけ、冷静に沈め逆転(28-26)。

正智深谷の加藤駿選手(3年生)

この場面、コートに正智深谷・成田靖監督の声が響き渡った。

成田靖監督
「駿、迷うな!いけ」

その言葉に応えるかのように加藤選手が綺麗なアーチを描きながら3ポイントを沈めた。

加藤駿選手(3年生)
「リバウンドもみんなが絡んでくれていた。『自分が外しても絶対に競ってくれる』と思っていたので、思い切り気持ちよく打ちました」

成田監督が「素の駿に戻れた」と評した加藤選手の一撃で、チームをけん引し11点リードで第2Qが終了(45‐34)。

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堅守速攻が爆発

後半の幕開けを告げたのは、やはりこの男、正智深谷の山口選手だった。鋭いドライブから得点するとそこから正智深谷のディフェンスが本領を発揮する。

正智深谷の山口哲平選手(3年生)

ディフェンスから作った良いリズムに呼応するように、エース加藤選手の3ポイントがネットを揺らした。山梨学院に攻め手を与えず、攻守が完全に噛み合った正智深谷が70-56と大きくリードを広げて第3Qを終えた。

留学生の猛追と耐え抜いた「正智の意地」

第4Q。勝利まであと10分の正智深谷の前に、山梨学院が立ちはだかる。留学生のコッシー・オ・アンドレイ選手(2年生)を起点にして得点を重ねる山梨学院が流れをつかみ、戦況が一転し、3点差まで詰められる(82-79)。

一進一退の攻防にピリオドを打ったのは、正智深谷の点取り屋、早船選手だった。

正智深谷の早船哉斗選手(3年生) 早船哉斗選手(3年生)
「自分たちは3年間苦しい思いをして走ってきた。平面で、トランジションで走り切ろうと思った」  

その言葉通り、土壇場でも足は止まらなかった。残り時間1分15秒、時間を止めざるを得ない山梨学院からのファウル。極限のプレッシャーがかかる場面でもフリースローを2本静かに沈めた。

早船哉斗選手(3年生)
「自分は今までシューターとしてやってきて、リバウンドはみんなが取ってくれるので自分が決めると思って挑んだ」

土壇場で山梨学院・30番の前田瑛多選手(2年生)に3ポイントを許し、最後までヒヤリとする場面もあったが、最後は正智深谷の早船選手が勝利を決定づける3ポイントを射抜き、勝負あり。
正智深谷は、山梨学院の「高さ」に苦しみながらも、第3Qまでのリードを守り切り、激闘を制した。

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次戦は福岡第一 「世間の評価を覆す」

3回戦の相手は、優勝候補の一角・福岡第一高校。成田監督はベスト8をかけた福岡第一戦を前にこう語った。

正智深谷の成田靖監督 成田靖監督
「誰も正智深谷が勝つとは思っていないので、こんなにワクワクする試合はもうない。」

成田監督が語る通り、優勝5回の強豪校・福岡第一の方が下馬評では上かもしれない。
しかし、正智深谷の選手たちの目におそれはない。

正智深谷の選手たち 山口哲平選手(3年生)
「世間の評価だと福岡第一が勝つと思われているんですけど、自分たちは3年間走ってきたので。
それを前面に発揮して勝ってきたい」 加藤駿選手(3年生)
「ずっと練習の時から3回戦で勝つことを考えてきた。
応援席もベンチも、試合に出ている5人も一体となって絶対に勝ちにいきたい」 早船哉斗選手(3年生)
「僕たちは苦しい思いをして、日本で一番キツいと思って練習してきたので、全員の思いを背負って走っていきたい」

勝負の世界に「絶対」はない。

注目の福岡第一との戦いは、26日12時50分、東京体育館Aコートでティップオフを迎える。
厳しい練習を乗り越えてきた正智深谷の「走るバスケ」は、まだ止まらない。

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