第105回全国高校ラグビーフットボール大会が開幕。開会式では、参加56校の選手たちが、高校ラガーマンあこがれの聖地・花園ラグビー場の芝生を踏みしめました。

 関西学院高等部・西浦章博主将の「支えてくれたすべての人、これまで戦ってきた全チームの想いを背負い、この舞台に立てる感謝を忘れずに、ここ花園で正々堂々と戦うことを誓います」という力強い選手宣誓とともに始まった今大会。第1日目から注目の強豪校が続々と登場し、詰めかけた観衆の前で手に汗握る大熱戦を繰り広げました。

常翔学園vs茗溪学園 かつて両校優勝…因縁の対決の行方は?

 第3グラウンド第2試合は、大阪工大高時代も含めて花園での全国制覇5回を誇る大阪の名門・常翔学園と北関東の雄・茨城の茗溪学園が対戦。第68回大会では、決勝戦で対戦予定も、昭和天皇崩御に伴う試合中止で両校優勝となった因縁の対決は、1回戦屈指の好カードに違わぬ白熱の展開となります。

 前半、先にペースをつかんだのは常翔学園。強い風のなか、風上をいかして敵陣深くまで攻め込むと、前半6分にWTB伊勢亀大悟選手が先制のトライ。さらに10分、モールを押し込んだ後、キャプテンのHO岡本慶次選手が判断よくトライエリアに飛び込み、12対0とリードをひろげます。

 一方の茗溪学園も反撃。粘り強いディフェンスで常翔学園の圧力をしのいだ後、15分には、茗溪学園らしいグラウンドを広く使って素早くボールを展開していく連続攻撃から、NO8宮内伸一朗選手のトライ。12対5と詰め寄ると、17対5と再び12点差にされた前半25分過ぎからは、常翔学園を自陣深くに釘付けにして攻め立てます。しかし、大事なところで、常翔学園の鋭いプレッシャーの前にミスが出て、得点に結びつけることができません。前半は17対5と、常翔学園の12点リードで折り返しました。

 サイドの変わった後半、風上を生かして攻め込みたい茗溪学園。しかし、またしても先にチャンスをものにしたのは常翔学園でした。岡本主将が「前半終了間際のピンチをしのげたのが大きかった。我慢するところをしっかりと集中して我慢して、接点でプレッシャーをかける自分たちのラグビーができた」と振り返ったように、後半6分には抜群のスピードで一気にトライエリアに迫ったSH元橋直海選手をフォローしたNO8山本智輝選手が力強い突破をみせて追加点となるトライ。22対12と10点差に詰め寄られた後の11分と15分には、ひとりひとりが縦への強さを発揮してしっかりと前に出る常翔学園らしい攻撃から連続トライを奪って、34対12として勝負を決定づけました。

 常翔学園・白木繁之監督が「初戦で茗溪さんのように力のある相手と戦えて、スピードある攻撃を体験できたのは大きかった」と語ったように、茗溪学園も持ち味のハンドリングスキルの高さをベースにしたスピード満点の攻撃で18分・22分に2つのトライを返しますが反撃もここまで。

 後半27分には、FW陣で圧力をかけてダメ押しのトライを奪った常翔学園。試合終了間際にも意地のトライを奪った難敵・茗溪学園を41対29で振り切り、桐蔭学園(神奈川)が待ち受ける2回戦進出を果たしました。

慶應志木vs青森山田 モール攻撃に敗れるも「花園は最高の景色だった」

 続く第3グラウンド第3試合は、創部68年目で悲願の花園初出場をつかんだ慶應志木(埼玉)と青森山田(青森)の激突。実力伯仲で接戦が予想されたこの試合は、序盤から、詰めかけた大応援団を背に慶應志木がペースを握ります。

 キャプテンの浅野優心選手が「花園への夢を実現するために、練習時間の大半をモールの練習に費やしてきた。自分たちで形にできることにこだわって、モールにきめてずっとやってきた」というモール攻撃で青森山田を押し込んでいくと、「青森山田との対戦が決まってから、押し込んだ後のボールの動かし方も徹底的に練習してきた」と話したモールの後の展開からチャンスを作り出していきます。

 そして前半7分、モールを押し込んだ後、素早く左に展開すると、最後はCTB浅野選手自らがタックルをはね飛ばした後、タッチライン際を快走してトライ。さらに14分、敵陣10mライン付近からモールを一気に押し込んでいくと、FB大澤蒼生選手の突破から最後はWTB川田真広選手が冷静にタックルをかわして左隅にトライ。10対0とリードします。

 一方、橋本高行監督が「モール攻撃を予想して対策はしてきたが、最初の2回のモールをしのいだ後は、予想以上にモールで押し込まれてディフェンスが混乱してしまった」と語った青森山田。一度傾いた流れをなかなか取り戻すことができませんでした。

 完全に勢いに乗った慶應志木は20分、トライラインまで7m付近からのモールを一気に押し込んで、NO8小島昌悟選手のトライで15対0とさらにリードをひろげると、25分と30分にもトライを奪って、前半で27対0として試合の流れを決定づけました。

 後半に入っても、慶應志木の勢いは止まりません。3分には、再びモールを押し込んで青森山田のトライラインにせまると、判断よく抜け出したHO李知成選手がトライ。怒涛の6連続トライで勝負を決めました。

 このあと青森山田も2つのトライを返しますが、さらにモールを押し込んで2トライを加えた慶應志木。48対12の快勝で初出場での初勝利に繋げました。

 一方、懸命の反撃を見せるも、最後まで慶應志木のモール攻撃を抑えることができず敗れた青森山田・葛田虎司主将は、「相手のいいモールからいい流れに持っていかれてしまった。最後まで、慶應志木の勢いを止めることができなかった。自分たちの力は発揮できずに終ってしまったけれど、花園は最高の場所、最高の景色だった。慶應志木のファンの方もたくさんいたが、(青森)山田のファンの方もいて、こんなに大勢の方に(僕らの)ラグビーを見てもらって本当に幸せな60分間でした」と涙とともに花園を後にしました。

1回戦・第1日の結果(12月27日)

 1回戦、第1日(27日)の結果は以下のとおり。初めてのノーシード、1回戦からの登場となった東海大大阪仰星(大阪)は、試合開始から坂出第一(香川)を圧倒。WTB小池慶太郎選手の90m独走トライなど、前後半合わせて21トライを奪う猛攻で大勝しました。

 初出場の岐阜聖徳(岐阜)は、東海大会決勝でも対戦した中部大春日丘(愛知)と対戦。序盤は、今年度から全国高校ラグビー大会ハイライトのMCを務める田中史朗さん(元日本代表・伏見工OB)が、「鳥肌が立つほどの気迫、ひとつとひとつのタックルに気持ちがこもっていた」と称賛した、果敢なタックルを軸とした持ち味の“前に出るディフェンス”で強豪校相手に健闘しますが、後半は力尽きました。U20日本代表にも選出された世代ナンバーワンのSH荒木奨陽選手、NO8坂口湊眞選手を中心とした中部大春日丘の攻撃を止めきれず69対3で敗れました。

 そのほか、早稲田実業(東京)は、試合運びの上手さを発揮して、実力校・石見智翠館(島根)を39対14で撃破。東福岡(福岡)が待ち受ける2回戦進出を果たしています。

▼第1グラウンド
東海大大阪仰星(大阪)137-0 坂出第一(香川)
昌平(埼玉)83-0 四日市工(三重)
早稲田実(東京)39-14 石見智翠館(島根)
筑紫(福岡)33-5 城東(徳島)
▼第2グラウンド
中部大春日丘(愛知)69-3 岐阜聖徳学園(岐阜)
尾道(広島)74-5 遠軽(北海道)
鹿児島実(鹿児島)22-14 コザ(沖縄)
▼第3グラウンド
大分東明(大分)73-0 若狭東(福井)
常翔学園(大阪)41-29 茗溪学園 (茨城)
慶應志木(埼玉)48-12 青森山田(青森)

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