京滋大学リーグで4季連続優勝中の佛教大に、プロ注目の好投手がいる。赤木晴哉投手(4年・天理)。リーグ戦通算15勝(3敗)、4年春にはリーグMVPに輝いた190センチの長身右腕だ。赤木を取材するため、京都府南丹市にある佛教大グラウンドへと向かった。(取材・文 MBSアナウンサー金山泉)

公式戦登板ほぼないまま…高校野球を終える

今秋のドラフト候補としてNPBのスカウトから注目されている赤木だが、これまでの野球人生は順風満帆なものではなかった。天理高校1年時、身長の伸びに対し筋肉の成長が追いつかず腰痛を発症。同級生の達孝太(日本ハムドラフト1位)がプロ注目と騒がれる中、赤木は3年間トレーニングすら満足にすることができず、公式戦の登板がほぼないまま高校野球生活を終えた。

「達が投げているのを見て自分もマウンドに立ちたいとは何回も思いました。でも悔しさより、腰を痛めた自分が悪いよなと割り切っていましたね」。赤木は人懐っこい笑顔を見せながら、そう当時の思いを話してくれた。

大学で才能開花 球速153キロをマーク

佛教大に進学して、腰痛が治りトレーニングができるようになると、その才能はみるみるうちに開花した。田原完行総監督が「一つのことに対し、ひたむきに努力し続けられる性格」と評する赤木は、地道に努力を積み重ね、高校時代には130キロ台が中心だったストレートは、今年6月の大学選手権で153キロをマークした。

去年11月、赤木にとって大きな自信がうまれた一人の打者との対戦があった。大阪商業大との明治神宮大会・関西地区第2代表決定戦。6対5、佛教大1点リードで迎えた9回裏2死2塁のピンチで、西武にドラフト2位指名を受けていた4番渡部聖弥に打順が回ってきた。

「同じ舞台で勝負したいんだろ?だったら勝負してこい」

「そのタイミングで(國友健一)監督がマウンドに来たんですが、僕は『申告敬遠』だと思っていました。でも監督から『プロに行く渡部と同じ舞台で勝負したいんだろ?だったらここは勝負してこい』と言われたんです。その言葉で気持ちが変わりました。監督がマウンドまで歩いてくる最中は、バッターボックスに向かっていく渡部選手が大きく感じて、正直『まずいな…』と思っていました。結果、スライダーでセカンドゴロに打ち取り代表の座をつかむことができたんですが、この対戦で一皮むけることができたと思います。それ以来、どんな場面でどんな打者が来ても自分は対峙できるんだと、自分に自信を持って投げられるようになりました」。

9月1日に開幕する秋のリーグ戦に向け、「何か自分の長所を生み出したいと思っています。ストレートは155キロを超えて、これを投げたら三振を取れるという絶対的な変化球を身につけたい。」と新たな武器の習得に励んできた赤木。「秋のリーグ戦で優勝し、関西第一代表をとって、神宮大会でも優勝すること。そして、自分も達と同じNPBのマウンドに立ちたいと思うし、達と投げ合いたいという気持ちも強いです」と目標を語った。

同期・達と同じ舞台に立つために―

「8人兄弟の5番目なんですが、高校から寮に入らせてもらって、野球に集中しやすい環境を作ってくれた。今父親は福井に単身赴任中なんですが、休みがあれば家族を連れて応援に来てくれるんです」と、家族への感謝も忘れない。

全国制覇、そして達と同じ舞台に立つために――。赤木は全力で投球できる喜びを感じながら、今日もマウンドで腕を振る。

◆赤木晴哉(あかぎ・せいや)
2003年10月5日生まれ 大阪府堺市出身 190㎝86㎏ 右投右打
三原台中(大阪狭山ボーイズ)~天理高。
天理高時代、公式戦の登板は3年春の奈良県大会2試合のみ。
達孝太とは今でも連絡を取り合い、年末年始には自主トレも共にしている。
佛教大では、リーグ戦通算15勝(3敗)。MVP1回(4年春)、最優秀投手1回(3年秋)、ベストナイン2回(2年秋、3年秋)。秋のリーグ戦で通算20勝到達も目標としている。趣味はサウナ。

◆取材・文 金山泉(かなやまいずみ)
MBSアナウンサー。1982年6月5日生、新潟県上越市出身。 
野球とB’zをこよなく愛する。
投手として首都大学リーグ2部で通算11勝(8敗)をマークした。

【野球サイコー!取材後記】
高校時代は腰痛で満足いくボールを投げることができなかった赤木。でもその3年間は「無駄じゃない」。大学4年間で「全てを取り返して見せりゃいいじゃない」。この秋にきっと待っている「EPIC DAY」。

※「無駄じゃない」「全てを取り返して見せりゃいいじゃない」…B’z「EPIC DAY」の歌詞

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