“天才”“ジーニアス”と呼ばれ、日本代表でも活躍した柿谷曜一朗(35)が、それ以前から〝天才〟と称されてきた川崎フロンターレの家長昭博(39)とTBSのサッカー番組「KICK OFF!J」でスペシャル対談。家長の存在は「小さい頃から憧れ」だったという柿谷。“天才”と呼ばれた二人が、共鳴しあった。

柿谷:家長さんは小さい頃からの憧れ、インタビューじゃなくて会うのも緊張する存在。インタビューしたいと言ったものの、ここに来ると間違えたかなくらい緊張している。

家長:ほぼ、はじめましてみたいなもの。

柿谷:年上の選手をインタビューするってないじゃないですか。先輩なので仕切ってもらえる。

家長:俺は全然仕切れないけど、でも喋るの上手いよね。だから今日安心してる俺。

柿谷:なんでも聞いていいって清武弘嗣(ともにチームメート)に許可もらった(笑)

家長:全然なんでも なんでも話す(笑)

「天才タイプではなかったと思う」

柿谷:セレッソの人間やったんですけど、とにかくユース年代のスタッフ・コーチがどのクラブどの子どもたちにも家長君の話をするんですよ。「お前たちは家長という奴を覚えておけ、もし見られる機会があるならば絶対に見ろ」と。

家長:そんなに褒められたことはない(笑)

柿谷:ガンバより家長が有名でした。逆に僕のことを知ったのはいつぐらいですか?

家長:初めて柿谷曜一朗の話を聞いたのはセレッソに来てから。そこで乾(貴士)や(香川)真司、ガミさん(石神直哉)に 柿谷曜一朗はホンマにすごいと聞かされていて、そんなにすごい選手がセレッソにいたんやとそれで認識した。
※家長は2010年にC大阪でプレー、当時柿谷は徳島でプレー

柿谷:天才・家長をずっと見ろと育てられて。自分が天才と言われていると気づいていた? 

家長:いやぁ、なんやろうね、天才タイプではなかったと思う。どっちかというと。俺は技術的に(上手い選手が)天才だとは思わない。思考が俺からしたら本田圭佑が天才やった。脳が(天才)。
※本田圭佑と家長はG大阪ジュニアユース出身、生年月日が同じ

柿谷:そうなんですね。

家長:なんかわかるでしょう。いないんですよ、あんなやつ。

柿谷:突き抜けられる天才ですよね。

家長:天才と言われたらあまり今いない。この間、(鹿島の)鈴木優麿くんと(柿谷が)対談しているところを見て、彼も変わっていそうで、変わっていなさそう。

柿谷:すごく誠実。

家長:天才タイプになってほしい。

柿谷:家長選手は“感覚”と聞いたことがあって、感覚でプレーできるから天才と言われていた
と思うんですけど。

家長:しっくりは来ない。

柿谷:天才と言われるのは僕はめっちゃくちゃ嫌だった。そうしないといけないのかなと思いながらプレーしていた。

家長:確かにそう言われたらもっとやらないとあかん。もっと上手にやらなあかんやろうなというプレッシャーもあった時期もあったし…今はもっと言ってくれ。

柿谷:(笑)

家長:言葉は捉え方、言葉というよりも捉えられる自分の状況よりも心の持ちようで変わった感じやから。練習が終わって着替えてクラブハウスを出た瞬間に、もう1人の自分が助手席に乗って「お前はこれから出来るか?どうすんねん?このままじゃあかんぞ」という自分が現れる時あるやん。俺はいつもそういう自分にグチりながら、反対の(助手席の)自分が「いやでもお前それじゃダサいよ」って(言う)。

柿谷:めちゃくちゃ分かるわぁ。

家長:「お前それダサいぞ」っていう会話をしながら、一日を振り返ったりする。

「野生に帰らなできひん」

共鳴する天才と呼ばれた二人。デビュー当時から変わらない、家長の魅せるプレーについて柿谷は―。

柿谷:今もそうだと思っているのですけど(自分のスタイルを)貫いているじゃないですか?戦術と言われている時代に、そういうのあるけど、「俺は感覚的にこっちの方が良いからそっちにポジションをとってまうねん」って聞いたんですけど、家長君はそれで結果も出しちゃうじゃないですか?アシストしたり得点したり、だから誰もが認めると思うし、そういうプレーを選んでいる感覚はあるんですか?

家長:勝手に身体がそっちにいっちゃう、それが自分の中で身体が勝手に動くやりたい事とか感覚的にいいことやから、それがいいんんじゃないかなと思うけど、戦術もあるし相手も味方もいるからそれが全部正しいとは思っていないけどそれが自分の良さかな。

柿谷:ペナルティエリア幅の家長君が一番好き、なんでも出来るじゃないですか?

家長:意外に出来ひんのよ俺。

柿谷:いやいや(笑) 右足でシュートも打てるし。

家長:でも言っている事は分かる。あの辺でほんまはフラフラしたい。(自陣に)帰らないといけない(外に)開かないといけない。

柿谷:それを無視して逆サイドに行く家長君が好き。

家長:(笑)

柿谷:多分、全然チームに言われていることと違う方向に行っている瞬間に、家長君がボールを受けて仕事をする、いなくなってほしくない。

家長:あまりこういうタイプは生まれにくいかもしれない。

さらに柿谷には家長のフィジカルについて気になる事があった。

柿谷:僕が初めて見た時から強かった。

家長:コケるのが嫌だったんですよ、コケたくない。コケるんダサいみたいな。自分の中で定義があって。

柿谷:コケた所を全然見たことがない。

家長:ファウルを貰いに行くのは嫌。そうしているうちに徐々にちょっとずつ身体が鍛えられた。

柿谷:印象的なのは手を出す、家長君が手を出したら誰もボールを取りにいかない。

家長:感覚的にこれは俺は分かんねんというのがある。それがたまたまボールがあって自分がいて、(隣に)人がいて、こうなったらボール取られへんっていう。それだけは分かる。

柿谷:イメージですけど手が顔に行くじゃないですか。

家長:いくいく(笑)

柿谷:俺はそれを試合で受けたことがある。初めて家長君と対戦した時、家長君からボールを取りに行って顔に手が来てどこかの指が鼻の中に入って。

家長:ごめん(笑)

柿谷:大出血して、そこから二度とボール取りに行っていない。

家長:そんなことがあったのに俺覚えていない(笑)

天性の感覚は今年のプレーにも表れていると柿谷は言う。

柿谷:今シーズンの出来は?

家長:毎年のように出てたほど試合に出てないから、試合出たり出なかったりあるから、(今季22試合出場1ゴール1アシスト)手ごたえはないわけじゃないけど、もっとやりたい、もっとできると思って毎日過ごしている。

柿谷:今39歳ですよね?何歳くらいまでとかありますか?

家長:40歳くらいじゃないの、世間一般的に言うと。

柿谷:世間一般的には過ぎています。絶対に、やりすぎです(笑)

家長:(笑)

柿谷:まだまだ伸ばせる部分は?

家長:野生に帰らなできひん、「あっ家長あいつまためちゃくちゃやり始めたぞ」という風なフェーズを自分で持って行かな、それが出来るかどうかは俺の覚悟とかサッカーを表現したいと思えるか、多分これからは試される。

柿谷:初めてちゃんとお話をさせてもらったんですけど、目がキラッキラしていますね、サッカーの話をしている時は。

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