9月13日に開幕する東京2025世界陸上。約200の国と地域から2000人を超えるアスリートが参加する。前回ブダペスト大会では、アメリカからは130人を超えるアスリートが出場。12の金メダルを含む29のメダルを獲得した。日本からは70人以上が出場した。一方、1人だけしか出場しない、という国もある。 サントメ・プリンシペだ。
サントメ・プリンシペとは
正式名称はサントメ・プリンシペ民主共和国。赤道直下、中央アフリカ西岸のギニア湾に浮かぶ島国で、国土面積は東京23区の約1.5倍、人口はわずか23万あまり。熱帯雨林や手つかずの自然に恵まれ、美しいビーチや豊かな生態系が観光客を惹きつけている。主な産業は、カカオと漁業。カカオは歴史的に国の輸出の中心で、島が「チョコレート諸島」と呼ばれるほどで、高品質なオーガニックカカオの生産にも力を入れている。また、沿岸漁業が盛んであり、多くのコミュニティの収入源となっている。
ゴレテ・セメド(28)の挑戦
そんな国から世界陸上に挑むのが、スプリンターのゴレテ・セメド。1996年10月5日生まれ。100mと200mを主戦場とし、サントメ・プリンシペ代表として2023年の世界陸上ブダペストに出場。

また2024年パリオリンピック™に女子100mにユニバーサル枠(標準記録を満たしていない場合でも、各国から最低1名の選手が出場できる仕組み)で出場。サントメ・プリンシペ選手団の旗手も務めた。
トレーニング拠点は国内にほとんどない
サントメ・プリンシペ国内には整った陸上施設がほとんどなく、国際大会を目指す選手の多くは国外へと活動拠点を移す。ゴレテ・セメドも例外ではない。Forbes(フォーブス)アフリカ・ポルトガル語圏版(2024年8月)によると、2019年には奨学金によりポルトガルのジャモール高地トレーニングセンター(Centro Desportivo Nacional do Jamor)で本格的なトレーニングを開始しているとその経歴が紹介されている。その後はサントメ・プリンシペの地元メディア"TÉLA NÓN”によれば、しばらくはリスボンの名門クラブ・SLベンフィカに所属していたが、2023年10月には北部の港町・ポヴォア・デ・ヴァルジンに本拠を置くアトレティコ・デ・ポボア(Atlético da Póvoa de Varzim)へ移籍。現在はポルトガル北部を拠点に、国内リーグや国際大会への出場を続けている。
ゴレテ・セメドの素顔
2023年5月、現地メディア「STP Digital」のインタビューでは、通信会社のプロモーションキャンペーン「4G」のモデルに起用されたことや、60mから400mまで複数種目に挑戦していることを語っていた。また、2024年7月には、フランスのRFI(ラジオ・フランス・アンテルナショナル)のインタビューで「自己ベストを更新することが最大の目標」と話し、オリンピック本番でも積極的な姿勢を見せていた。そして今年6月、100mの自己ベストを11秒27に更新した。
走る事で「サントメ・プリンシペ」が知られる
「サントメ・プリンシペ」と国際舞台で国名がアナウンスされること…それは、サントメ・プリンシペにとって、スポーツの枠を超えた"存在証明"の瞬間でもある。9月の東京2025世界陸上には、ユニバーサル枠での出場となるゴレテ・セメド。記録や勝敗だけでは語れない挑戦が、東京・国立競技場のトラックにひとつ刻まれることになる。
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