陸上の世界選手権東京大会(世界陸上)では、競歩男子日本代表の2人に優勝の期待がかかる。

 初日の13日にある35キロの川野将虎(旭化成)は、昨年10月、2時間21分47秒で当時の世界記録をマークしている。

 東洋大出身。35キロの長距離を歩き続ける源は、距離が長いほど「楽しい」と思える心の持ちようだ。

 「苦しいときに、技術や体力だけではなく、人間の心が表れるから」

 小学生のころやっていた柔道では、試合で一度も勝てなかった。中学で始めた卓球も、鳴かず飛ばず。静岡・御殿場南高の頃、先生に促されて競歩を始め、のめり込む。富士山麓(さんろく)の険しい山道を黙々と歩いた。毎週日曜は一人で30キロ歩いたという。

 名前の将虎は、寅年生まれで「将軍のように強くなってほしい」との思いが込められている。

 2021年の東京五輪50キロ競歩では、猛暑で一時路上に突っ伏しながら、6位入賞を遂げた。「(長距離は)忍耐強さが必要。今回のラストも、『このペースで最後まで行ききる、弱気になったら世界で勝てない』と言い聞かせていた」

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 20キロの世界記録保持者・山西利和(愛知製鋼)も2019年ドーハ、22年オレゴンに続く3回目の優勝を見据えている。

 丸尾知司(愛知製鋼)は2月の日本選手権20キロと3月の35キロでともに2位に入った。「完璧に兼ねられるわけではない」と難しさを感じながらも、両種目で挑戦。3回目の世界選手権で初のメダル獲得をめざす。

 女子は藤井菜々子(エディオン)が日本選手権20キロで、岡田久美子(富士通)が2019年に樹立した従来の日本記録を1分以上更新した。1時間26分台はメダルを狙える水準と言える。

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