記者会見に出席した早河洋民放連会長(18日、東京都千代田区)

日本民間放送連盟(民放連)は18日、同連盟として初となるコーポレートガバナンス(企業統治)に対する指針案をまとめたと発表した。人権尊重の徹底や法令の順守を明記した。2026年に外部の専門家を議長とする、会員各社のガバナンスを検証する常設の審議会も設置する。

フジテレビジョンにおける人権問題を受け、業界全体として人権やガバナンスの問題に取り組む姿勢を示した。

18日にまとめた「民間放送ガバナンス指針(仮称、案)」は5つの基本原則を設けた。人権が尊重される社内体制を構築し継続的に改善すること、法令や社会規範を順守することなどを掲げる。

各社が指針の適用状況を自主的に点検し、毎年1回公表する。公表する事項や方法は各社の取締役会の決議を経たうえで会社の規模に応じて決める。経営情報の開示については民放連がひな型を用意する。民放連は各社の開示状況を集約してネットなどで公表し、透明性の向上を図る。

総務省の検討会などでの議論を経て25年内をめどに確定し、26年以降の運用開始を予定する。

民放連の早河洋会長(テレビ朝日ホールディングス・テレビ朝日会長)は同日の記者会見で「今回の指針において基本的な考え方を整理した。民間放送を信頼できる情報の発信主体とする」と強調した。

指針の制定に合わせて、民放連の定款に会員社がコーポレートガバナンス向上に関わる活動を実施することを新たに記すことも決めた。

26年にはガバナンスに詳しい弁護士など、外部の専門家を議長とする「ガバナンス検証審議会(仮称)」も新設する。審議会は会員社にガバナンス上の重大な不祥事が発生した場合、当該社に対して事案の報告を求めるとともに、是正措置の策定を要求する。再発防止策への助言もする。将来的には会員活動の制限や除名などの罰則も検討するという。

指針では直接の業務執行をしない社外取締役や監査役の役割の重要性を強調した。会員社の役員を対象とした研修実施や、ガバナンスに関する外部の専門家と契約し、会員社が日常的に相談できるような窓口を民放連に設置することも盛り込んだ。

元タレントの中居正広氏とフジテレビの元従業員の女性との問題を契機に、フジテレビをはじめ放送業界は揺れている。フジテレビでは親会社が設置した第三者委員会などの調査を通じて、初動対応の不備や社内風土に関する指摘がなされた。スポンサー離れといった深刻な影響も広がった。

日本テレビ放送網では元TOKIOの国分太一氏のコンプライアンス違反が表面化し、同氏の長寿番組からの降板やグループ解散に発展した。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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