主食用米の需要見通し “最大で前年と同程度” 農林水産省

農林水産省は19日、向こう1年の主食用米の需要見通しを正式に示し、インバウンド需要などを踏まえて最大で前の年の実績と同じ程度になるという見方を示しました。
一方、生産はそれを上回る規模があると見込んでいて、コメの高値が落ち着くかが焦点になります。
これは、19日開かれた農林水産省の有識者会議で示されました。
それによりますと、来年6月まで1年間の国内の主食用米の需要量は697万トンから711万トンを見込んでいます。
インバウンド需要や、このところ増加傾向にある1人当たりの消費量を踏まえて、最大で前の年の需要実績711万トンと同じ程度になるとしています。
一方、過去5年の平均の消費量から試算した場合には前の年を14万トン下回るとして、見通しに幅を持たせています。
農林水産省は、これまでコメの需要見通しについて、人口減少などで毎年およそ10万トンずつ減るとしてきましたが、過去2年は実績が見通しを大幅に上回る結果になり、価格高騰の一因になったとの指摘もあったため、今回、算出方法をインバウンド需要などを含めた形に見直しました。
一方、生産の見通しも示され、こちらは主なコメの産地で増産が進んだ結果、需要を上回る728万トンから745万トンを見込んでいます。
農林水産省は需要を超える生産量が確保されるとして、コメの高値は次第に落ち着くと見ていますがその見通しどおりに価格が推移するかが焦点になります。
有識者会議 委員からは「価格の動向注視」
需要を上回るコメの生産量が見込まれていることについて、有識者会議の委員からは今後のコメの価格の動向を注意深く見ていきたいという声が聞かれました。
このうち日本生活協同組合連合会の二村睦子専務理事は「コメの量はそんなに不足していないと聞いているのに、今の価格はやや不思議だ。今回の見通しが共有されていくと、コメの量は足りているという情報が伝わっていくと思うので、価格はもう少し落ち着いてくると期待している」と話していました。
農業法人の平田勝越社長は「来年6月末の民間のコメの在庫はかなり多いと思う。そうした中、新米の価格は史上最高ぐらいでスタートしているので、需給によらない値づけになっている気がする。その意味ではどのように反動が出るのか心配している」と話していました。
小泉農相「数字など見てもらい 冷静に対応を」
小泉農林水産大臣は、19日の閣議の後の記者会見で、向こう1年の主食用米は需要を上回る生産量が確保され、民間の在庫も増える見通しだとして「コメを扱う事業者からは『足りなくなるのが心配だ』という声も聞いているが、この数字なども見てもらい、冷静に対応するようお願いしたい。マーケット価格は引き続き注視していく」と述べました。
直近2年の需要見通し 実態と大きくかけ離れる結果
農林水産省が示すコメの需要見通しは直近の2年、実態と大きくかけ離れる結果になっていました。
国内のコメの需要について農林水産省は人口減少や食の多様化などの影響で最近は毎年、およそ10万トンずつ減少すると見込んできました。
ただ、おととし産は682万トンの需要見通しに対し、実際の需要は705万トンと23万トン上振れしたほか、去年産の実績も見通しより37万トン多い711万トンとしています。
これについて、農林水産省はこれまでの試算ではインバウンド需要やこのところの1人当たりのコメの消費量の増加が反映されていなかったことなどを理由に挙げています。
また高温の影響で精米したあとの歩留まりが悪くなるケースもあるとして、毎年7月下旬ごろに示す向こう1年間の主食用米の需要見通しについて、ことしは公表を見合わせ、算定方法の見直しを進めていました。
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