
任期満了に伴う川崎市長選(10月12日告示、同26日投開票)に4選を目指して立候補を表明している現職の福田紀彦市長(53)が22日、市内で記者会見を開いて公約を発表した。市内産業を担う人材づくりのために市内に新たな学校の設立を掲げたほか、臨海部での水素関連、新川崎地区での量子技術を核とした新産業育成などを訴える。
「循環都市」をキーワードに「人づくり」「健康づくり」「産業」など7つの公約の柱を示した。人づくりの面では、高等専門学校(高専)の設立を掲げた。高専は主に中学校の卒業後に進学し、機械や電気、情報、建築などを5年間かけて専門的に学ぶ。座学だけでなく機械などを使った実践的な教育が特長で、即戦力として製造業などからは根強い求人がある。

福田氏は「高い技術力、専門知識を持った人材を企業は求めている」として、工業都市・川崎の産業を担う人材づくりを急ぐ。市内の企業や大学と連携し、教員の派遣、寄付講座なども視野に入れている。特に「高度なものづくり、デジタル人材の育成」に力を入れる方針だ。高専は全国に約60あるものの、神奈川県内にはないため一定の需要が見込めるとみる。
新産業の育成では、水素と量子技術の2つを掲げた。臨海部ではJFEスチールが23年9月に京浜工業地帯の象徴だった高炉を休止し、跡地の活用策を市と進めている。水素エネルギーの活用のほか、次世代モビリティーの開発など新産業を育てる方針だ。
臨海部のある川崎区は市の製造品出荷額の8割弱を占める。雇用や税収を生み出す重要な地域で、市経済のけん引役となる新産業を根付かせる必要性が指摘されている。

新川崎地区では東京大学などによって21年に設置されたアジア初の商用量子コンピューターを使った研究開発が進んでおり、新素材や新薬開発、金融工学への活用が期待されている。臨海部と新川崎地区の2拠点を連携させ、川崎市全体にイノベーションを行き渡らせる仕組みを模索する。
住宅政策では、住み替えの促進を掲げた。市内では住宅価格や家賃の高騰で子育て世帯が市外へ転居する動きが一部でみられる。「ライフスタイルによって住み替えていく趣旨」として、空き家や子どもが独立して両親だけでは持て余している大きな戸建て住宅などが不動産市場に流通する仕組みの構築を検討する。
福田氏は7つの大きな柱に加え、大都市の行政権を強める「特別市」制度の実現や学校の体育館への冷房設置、自動運転バス、18歳までの医療費無償化などあわせて約30の公約も示した。市長選には福田氏に加えて複数の新人が既に出馬を表明しており、福田氏による市政継続の是非が争点のひとつとなるとみられる。
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