大和証券グループ本社の荻野明彦社長は日本経済新聞のインタビューで「AI(人工知能)は人間の力を最大限発揮するパートナーだ」と語った。AIによる電話応答だけでなく、対面での資産運用提案の質を高めることにも使う。金融の手法を生かし、テーマパークや農業への参入など、新規ビジネスを拡大する考えも強調した。
荻野社長は10月9日に開く「金融ニッポン」トップ・シンポジウムに登壇し、AI時代の金融経営について議論する。大和は2024年に「AIオペレーター」を導入した。証券口座乗っ取り事件に伴う本人認証の厳格化で顧客からの問い合わせが増えた25年は「ピーク時に1日1万5000件超を対応した」。
AIが会話形式で直接顧客からの問い合わせに回答する電話応対システムは、金融機関では珍しい。AIを使うことで顧客が電話口で待たされる時間を短縮しつつ、人間の業務を効率化した。
今後は自律的に作業を実行する「AIエージェント」を社員に普及させることに力を入れる。25年7月にAIエージェントの導入で日本マイクロソフトと提携した。25年を「AIエージェント元年」と位置づけ「私自身もAIを活用できなければ取り残されると社内で発信している」という。
特に期待するのは、最重要分野と位置づける富裕層や個人への対面営業の高度化だ。「AIが顧客との面談内容を記録するだけでなく、個々の事情にあわせてリアルタイムな提案や営業員のサポートができないかと考えている」

大和は24年にあおぞら銀行に出資して提携を進めている。「この10月から、あおぞら銀行が我々のファンドラップを販売していく」といい、個人営業分野での連携も本格的に始まる。
足元の金利上昇を踏まえ「ウェルスマネジメント(富裕層ビジネス)やアセットマネジメントを補完する銀行機能を強化していきたい」とも話した。傘下のネット銀行、大和ネクスト銀行では「日銀のマイナス金利政策もあってこれまでは預金拡大に抑制的だったが、キャンペーンなどで拡大を進めている」という。
大和は7月に開業した沖縄県のテーマパーク「ジャングリア」を企画した刀(大阪市)にも出資している。パプリカの生産・販売といった農業分野にも投資のノウハウを生かし参入した。荻野社長は「新規ビジネスの拡大は手綱を緩めることなく進めていきたい」と力をこめる。
「金融ニッポン」シンポジウム◇日時、会場
10月9日(木)午後1時〜2時30分、日経ホール(東京・大手町)。入場無料
◇申し込み
会場での参加はウェブサイト(https://www.nikkei.com/live/event/EVT250807003)からお手続きください。10月1日(水)に締め切ります。
◇講師 木原正裕・みずほフィナンシャルグループ社長、奥田健太郎・野村ホールディングス・グループ最高経営責任者、亀澤宏規・三菱UFJフィナンシャル・グループ社長、荻野明彦・大和証券グループ本社社長、中島達・三井住友フィナンシャルグループ社長
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