複合ビルの建設予定地だったJR博多駅南側。ビル建設に向けてレールの位置をずらす工事が2023年に行われたが、その後は事業が止まっていた=福岡市博多区で2025年9月26日午後3時42分、久野洋撮影

 JR九州は26日、博多駅(福岡市博多区)南側で在来線の線路上空を活用して複合ビルを建設する「博多駅空中都市プロジェクト」を中止すると発表した。建設費が当初の想定より2倍近くかかることから、採算が取れないと判断した。

 同社によると、線路上空での施工は技術的に難易度が高く、工事費高騰の影響を大きく受けることが判明。工事も列車が通らない夜間中心の作業となるため、人件費が膨らむ見通しとなった。建物の規模や用途の見直しも検討したが、実行可能な事業計画策定が困難だとして、9月の取締役会で計画中止を決定した。

 計画では、複合ビルは地上12階、地下1階で、延べ床面積は約5万平方メートル。1階は商業ゾーン、3~8階が賃貸オフィス、9階以上に外資系ホテルが入居する構想だった。

JR博多駅と周辺。左が熊本方面、右が小倉方面=福岡市博多区で2025年3月6日、本社ヘリから上入来尚撮影

 2019年にプロジェクトチームを発足させ、線路の位置を変えるなどの準備工事に着手。25年度に本格着工し、28年末の完成を目指していた。設備投資の当初の予算額は435億円で、すでに60億円を支出しているが、業績に与える影響は調査中としている。予定地はほぼ更地の状態だが、今後の計画は現在のところないという。

 博多駅周辺では福岡市が再開発促進事業「博多コネクティッド」を進めており、JR九州も容積率などの規制緩和の適用を目指して準備を進めていた。

 古宮洋二社長は26日の定例記者会見で「新型コロナウイルス禍で着手が遅れ、コストも上がってしまった。博多駅エリアの目玉のプロジェクトだと思っていたので、断念せざるをえなかったのは非常に残念だ」と語った。【後藤浩明】

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