
経済産業省はこのほど、省エネルギー住宅の新たな認定基準を発表した。これまでは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH=ゼッチ)」と呼ばれていたが、「GX ZEH」に改称する。戸建て住宅では蓄電池の設置を必須にするなど、より厳しい水準を求める。2027年4月から新基準での認証が始まる。
「GX ZEH」は、断熱性能を大幅に高めた建材を使うとともに、太陽光など再生可能エネルギーによる発電と高度な電力制御技術を組み合わせることで、標準的な住宅より、エネルギー消費量を100%以上削減した「消費エネルギー実質ゼロ」を目指した住宅を指す。

新たに、115%以上削減して大幅にマイナスとなる住宅を「GX ZEH+」と呼び、事業者の努力に報いる。認定された住宅は購入時に補助金の支給対象になる。
これまでの基準では、標準的な住宅に比べ、冷暖房などのエネルギー消費量を20%以上削減することが求められたが、新基準では35%以上に高めた。これまで通り、再エネの導入量は削減量に含まない。
国土交通省が定める断熱性能の要件は「等級5」から「等級6」に引き上げた。例えば、外壁の断熱材の厚さを従来の105ミリから205ミリにすることなどが必要になる。新たなエネルギー削減目標と断熱性能は、集合住宅と戸建ての両方に適用される。
設備面では、戸建て向けに、蓄電池と高度なエネルギーマネジメントシステムの導入を認定基準に加えた。集合住宅も戸建ても太陽光パネルの設置が必須要件。これまで戸建ては、日照時間が限られる多雪地域や隣接する建物の影響で日陰になる時間が多い、狭い土地に建つ住宅に限り、要件から除外していた。
その一方、集合住宅はこうした規定がなく、5階建てまでの中・低層マンションなどで、太陽光パネルの設置が求められない「オリエンテッド」と呼ばれる認定が急増。23年度は全体の約48%に当たる6597棟に上った。
このため、新基準では雪の多い地域か6階建て以上の場合に限り、設置を免除することにした。壁や窓などに設置できるペロブスカイト太陽電池などの開発状況に応じ、今後も断続的に適用基準を見直す。
現行基準での認証は28年3月末まで取得できる。また、同月末までに建設された住宅であれば、翌4月以降も現行基準で申請できるが、その場合の名称は「ZEH」のままとなる。
経産省は、基準の厳格化や名称の差別化をテコに、より高い省エネ住宅を求める市場を形成することでハウスメーカーの競争を促したい考え。新基準の導入に合わせて補助金も見直される見通し。政府はすべての住宅に対し、標準的な住宅より20%高い省エネ性能を持たせる目標を掲げ、50年の達成を目指しており、早期実現を認証制度で後押しする。【中島昭浩】
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