スノーピークの次期社長に決まり記者会見する水口貴文氏(左)。右は会長になる山井太社長(30日、東京都渋谷区)

アウトドア用品大手のスノーピークは30日、スターバックスコーヒージャパン(東京・品川)元最高経営責任者(CEO)の水口貴文氏(58)が10月1日付で社長最高執行責任者(COO)に就任すると発表した。社長交代は3年ぶりで、創業家以外からの就任は初めて。キャンプブームが一巡するなか、外部人材に再成長を託す。

創業家の山井太社長(65)は代表権のある会長CEOとなる。新体制のもとで2027年末から28年3月にかけての再上場を目指す。

「とがり続ける成長で日本の自然観を世界に広める」。水口氏は30日に開いた記者会見でこう意気込んだ。

水口氏は高級ブランドのルイ・ヴィトンやロエベの日本法人などを経て14年にスタバジャパンに入社した。22年にはスノーピークの社外取締役に就任した。山井氏は「圧倒的な実績と経験を持ちながら、感性豊かで人間的」と評価する。

山井氏は商品開発や新規事業の立ち上げを、水口氏は経営全般を担う2トップ体制となる。山井氏は「バディ経営で、自分はゼロイチのサービスを構想し、水口さんが組織化・ブランド化していく」と述べた。

スノーピークは15年に東証1部(現プライム)に上場した。金属加工メーカーが集まる新潟県燕三条地域に本社を構える。シンプルなデザインや頑丈な商品の作りでキャンプ愛好家からの支持を集め、キャンプブームに合わせて卸売りや直販店を拡充した。21年12月期の連結純利益は27億円と、19年12月期から6倍以上に増えた。

その後ブームが沈静化し、23年12月期の連結純利益は22年同期比99.9%減の100万円と業績が低迷した。米投資ファンドのベインキャピタルと組みMBO(経営陣が参加する買収)を実施し、24年7月に東証プライム上場廃止となった。

25年12月期の連結純利益は9億円を見込む。店舗再編や在庫削減、人件費の抑制などにより20年12月期(10億円)並みの水準まで回復している。今後はキャンプ場を開設した米国などの海外事業やアパレル事業の強化を進める。25年から30年にかけての平均成長率は日本は10%程度、海外は15%超を目指す。

新体制では企業統治(ガバナンス)もテーマとなる。山井太氏の長女で22年に社長を務めていた山井梨沙氏が「既婚男性との交際及び妊娠」を理由として社長を辞任し、太氏が社長に復帰した経緯がある。

梨沙氏が今後、経営に戻る可能性については「時代の要請があり、今後の我々の事業展開に必要であれば、帰ってくることはありえるかもしれない」(山井氏)とした。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。