日本航空(JAL)は30日、8月に国際線の機長が社内規定に違反し滞在先で飲酒を繰り返していた問題を受けた再発防止策を国土交通省に提出した。新ルールを定めて、10月から暫定的に運用を始める。血液検査などの情報からパイロットの飲酒傾向を把握して管理を強める。経営陣が全パイロットと対話して飲酒に対する意識向上も図る。

JALは40歳以上のパイロットについて年2回、「航空身体検査」と呼ばれる健康診断を義務付けている。同検査での血液検査といった情報からパイロットの飲酒傾向を把握する。過去に乗務前のアルコールが検知されたかや、飲酒に関わる不祥事を起こしていないかなど情報を加えてパイロットの飲酒リスクを評価する。

会社側が「飲酒リスク」があると判断した場合は一旦乗務をさせず、医療機関での診断や評価結果を踏まえて再び乗務させるかを決める。10月から同ルールの運用を暫定的に開始する。本格的な運用は12月からとする。

国交省内で謝罪をするJALの鳥取三津子社長(10日、東京都千代田区)

JALは再発防止策に関連して、一連の飲酒問題について「経営とパイロットの一体感の不足」が原因とした。10月から2026年3月まで、鳥取三津子社長を含む経営陣が約2200人いる全パイロットと対話して飲酒問題への意識を高める。

また、パイロット部門の管理職を成田空港(千葉県成田市)で増員する。これまで管理職の配置が羽田空港(東京・大田)に偏っており、国際線のパイロットに目が届きにくかったことに対応する。

JALは飲酒に関する社内規定を守るという内容の誓約書を全パイロットに出させることを検討し、いったん各人に送付したが、最終的には提出しなくてもよいことにした。JALの南正樹運航本部長は「誓約書を取ることが目的ではなかった。しっかりと対話していく」としている。

JALでは24年から飲酒を巡る運航トラブルが続いている。9月3日に直近の飲酒問題が発覚した。国交省は同月10日、JALに厳重注意の行政指導をし、同月30日までの再発防止策の提出を求めていた。

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BUSINESS DAILY by NIKKEI

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