
京都市観光協会は1日、市内の主要ホテルの8月の平均客室単価が前年同月比6.7%安い1万6863円だったと発表した。下落は2カ月連続だ。稼働率は76.8%で同4.9ポイント上がった。記録的な猛暑に加え、大阪・関西万博に客足が向いていることから、客室価格をやや下げて集客をねらった可能性がある。
延べ宿泊数は前年同月から10%伸びた。日本人の宿泊数は0.1%増、外国人は16.3%増えた。日本人宿泊数が前年同月を上回るのは23年3月以来だ。
不動産データ分析大手の米コスター・グループ傘下のSTRによると、調査の方法や軒数は協会の統計と異なるが、京都市のホテルの8月の平均客室単価は前年同月比0.1%高、稼働率は3.3ポイントの上昇だった。一方で上昇幅が大きいのが万博開催中の大阪だ。STRの調べでは、大阪市の8月の平均客室単価は18.7%上がった。
「万博で関西全体が盛り上がると期待されていたが、実際には大阪に客が集中する働きがあった」。京都市観光協会の堀江卓矢氏はこう話す。
高級ホテルをよく利用する米国人の宿泊が減少したことも、客室単価の下落圧力になったと思われる。8月の米国人の延べ宿泊者数は前年同月比8%減少した。一方で中国人の延べ宿泊者数は32.5%増えた。

連日の暑さも影響しただろう。京都地方気象台によると、最高気温が35度以上の猛暑日は9月29日時点で計61日となった。埼玉県熊谷市は53日だった。
ホテルオークラ京都は8月の平均客室単価が3%ほど安くなった。稼働率も前年より5%ほど低下した。「顧客の年齢層が高く、暑さで旅行を控えた方も多かったのでは」とみる。
京都への客足が遠のき、観光産業は苦戦を強いられた。人気土産の八ツ橋を販売する聖護院八ッ橋総本店は7〜8月の売り上げが昨年比で1割弱ほど下がった。特に清水寺や伏見稲荷大社など観光地周辺の店舗が厳しかったという。鈴鹿可奈子社長は「命に関わる危険な暑さのなか『どうぞ来てください』とは言いづらい」と話す。

東映太秦映画村は7〜8月の客数が前年比2〜3割減少した。24年4月からリニューアル工事で一部エリアを閉鎖していることもあるが、企画制作部の洲崎哲嘉氏は「屋外施設の印象が強い映画村では、猛暑が最も大きなマイナス要因」と語る。
暑さ対策として、ホテルオークラ京都は午後3時までチェックアウトを遅らせる「おこもりプラン」を始めた。暑くなる日中は部屋で過ごしたり、午前中に観光してから客室でシャワーを浴びたりできる。初めての取り組みだったが、想定よりも好調な売れ行きだったという。
万博は10月に閉幕するが、夏の猛暑は来年以降も収まりそうにない。寺社や景勝地など屋外の観光地が多い京都では、気候変動が観光業に大きなリスクとなっているのは確かだ。
(足立佑太)
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