
【ピエモント=大平祐嗣】いすゞ自動車は1日、米国南部サウスカロライナ州ピエモントで商用車工場の起工式を開いた。同社にとって米国の自社工場建設は初めて。取材に応じた片山正則会長最高経営責任者(CEO)はトランプ米政権の関税政策について「(米工場を持つことで)現地での部品調達するなど対応手段が増える」と述べた。
起工式は東京ドームおよそ2個分の約9万3千平方メートルの広さを持つ工場建屋内で開かれた。建屋や土地取得、生産設備の導入に約2億8千万ドル(約400億円)を投じ、稼働は2027年を目指す。中小型トラックを生産する。従業員は700人以上を見込む。
いすゞにとって米国で自社工場を設けるのは初めて。米国に工場を持つことについて片山氏は「やっぱり夢だった」と述べた。過去にはSUBARU(スバル)との合弁企業で多目的スポーツ車(SUV)を生産したこともあったが、03年に撤退していた。
現在は販売台数のおよそ6割を神奈川県藤沢市の工場から輸出し、4割を米中西部ミシガン州の委託先の工場で組み立てて販売してきた。新工場ができれば大半が米国生産に切り替わる。
工場が稼働すればトランプ政権の高関税政策は追い風にもなる。現在、商用車には相互関税の15%が適用されている。いすゞは26年3月期の関税影響のコストを140億円と算出しているが、米国で製造できればこのコストを軽減できる。
トランプ氏は9月下旬に自身のSNSで、10月1日からは大型トラック向けの分野別関税をかけるとも発表していた。会社側はいすゞが主に米国で販売するトラックは中小型に分類されるため影響は小さいとの見方を示した。
サウスカロライナ州ピエモントにはゼロから拠点を設ける。近くには独BMWが90年代に進出するなど、自動車サプライヤーが集積する。自動車関連の労働人口は7万人以上とされる。片山氏は「州として人材トレーニングのプログラムを持っている」と人材確保での優位性を指摘した。
9月には米南部で工場を新設する韓国の現代自動車などの現場で作業員475人が不法就労の疑いで米当局に拘束される事件が起きた。いすゞ米国法人トップの村上昇氏は「ビザの取得は厳格に運用していく」と述べた。
【関連記事】
- ・自工会、米関税引き下げ交渉を政府に要望 会長「影響小さくない」
- ・いすゞ、米国向け小型トラックを現地生産へ 関税影響緩和見込む
- ・いすゞ、米国でトラックの新工場 エンジンやEV向け
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。