
日銀の植田和男総裁は3日、大阪市内で開いた関西経済4団体共催の懇談会に出席した。大阪・関西万博の成果を評価した上で、閉幕後も「インバウンド(訪日外国人)需要の増加トレンドは維持され、経済への大きな下押し圧力はかかるとはみていない」と述べた。統合型リゾート(IR)などの不動産開発が関西経済を下支えするとの見方も示した。
懇談会には関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)など地域経済界のトップら約300人が参加した。植田総裁は万博について、国際社会との交流拡大につながった点などに触れ、「関西が持ち前のチャレンジ精神を発揮し、未来社会の実験場としてさらに発展することを期待する」と話した。
日銀が1日発表した9月の企業短期経済観測調査(短観)によると、近畿2府4県の企業の景況感は2四半期連続で改善した。日銀大阪支店は地域の景気判断を「一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかに回復している」としている。

植田総裁は「経済の不確実性は引き続き高いが、関西では設備投資が堅調さを維持している」と指摘した。成長分野である人工知能(AI)やデータセンター関連の投資が進んでいることにも言及。「大阪駅北側の『うめきた』をはじめとする再開発やインフラ整備も進んでいる」として、潜在的な成長力の高さを評価した。
懇談会では関経連の松本会長が米国の高関税政策に触れ「不確実性は拭えないが経済界全体で乗り越えていきたい」と述べた。関西経済については「インバウンドは増えているが、物価高の影響で(一般の生活に近い)小売業の業績が伸び悩んでいる」との懸念も示した。
大阪商工会議所の鳥井信吾会頭(サントリーホールディングス副会長)は中小企業の現状を説明。一部では価格転嫁が進んでいるものの、販売数量が伸びないケースも多いとし「資金繰りに影響が出ないよう中小の実情に応じた金融政策を行ってほしい」と注文した。
植田総裁は「中小企業の状況を含めて内外の経済物価情勢や金融市場の動向を丁寧に確認していく」と応じた。
(柘植衛、加藤彰介)
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