
名古屋工業大学の谷端直人助教らの研究グループは、全固体電池向けの新しい電極を開発した。従来主流の酸化物ではなく塩化物を電極に活用する仕組みで、既存のリチウムイオン電池より低コストで製造できる可能性がある。車載電池向けの実用化を目指す。
リチウムイオン電池は商用化から30年以上が経過し、技術革新の余地が少なくなり、次世代電池の開発が進んでいる。リチウムイオン電池内の電解質を液体から固体にした「全固体リチウムイオン電池」は安全性や出力の向上が見込まれる。
塩化物電極は全固体リチウムイオン電池の正極に使用できるといい、谷端助教によれば「近年世界的に研究開発が増えつつある」という。
従来の酸化物の電極と比べて電位が高く、エネルギー密度の向上が図れる。リチウムイオンが通りやすいため、電極に固体電解質を混ぜ込まなくてもリチウムイオンが行き渡りやすい長所もある。
しかし塩化物を使う電極は、高電位時に塩化物イオンがガス分子になって塩素が脱離しやすい問題があり、繰り返しの充放電が困難だった。
研究グループは、塩素や鉄でできた塩化物の塩素原子の一部を酸素原子に置換した。一部を酸素を置換した塩化物電極では、充放電時の電位がわずかに下がり、塩化物イオンの脱離を防ぐことができた。20回の充放電試験で容量の低下はほとんど見られなかったという。
エネルギー密度は全固体電池向けの鉄系電極として「世界トップクラス」(研究グループ)という。資源的に豊富な鉄を活用することで、コストの低さなどを生かした電極材料として実用化を目指す。
今回の研究成果はドイツの学術誌「アドバンスト・エナジー・マテリアルズ」に掲載された。
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