秋田市のアルフレッサファインケミカル

医薬品卸のアルフレッサホールディングス(HD)は6日、バイオ医薬品の後発薬(バイオシミラー)の国内生産を始めると発表した。新興企業と合弁会社を設立し、秋田県に工場を新設する。売上高の大きいバイオ医薬品の特許切れが相次ぎ、バイオシミラー市場の拡大に弾みがついていることに対応する。

アルフレッサHDとキッズウェル・バイオ、カイオム・バイオサイエンス、台湾の開発・製造受託(CDMO)事業者であるマイセナックス・バイオテクの4社で合弁会社を設立する。同日基本合意を結び、会社の名称や出資比率などは今後決める。

アルフレッサグループ内で、医療用医薬品の原薬を製造するアルフレッサファインケミカル(秋田市)の敷地内に工場を新設する。もともと化学合成で生産する原薬の工場があり、新たに生物を使うバイオ工場を作る。2026年3月までに着工し、アルフレッサHDは32年度までの中長期経営計画内に商用生産を開始するとしている。

アルフレッサHD、カイオム、キッズウェルは、自ら臨床試験(治験)を通じて独自のバイオシミラーを商品化する。すでに複数の商品化で合意しているという。まずは自社品を製造販売して工場の稼働実績を生み出し、その後、主に希少疾患薬など患者数の多くないバイオシミラーの受託生産を目指す。

国も医療費削減のため、バイオシミラーの普及拡大を支援している。厚生労働省の事業「バイオ後続品国内製造施設整備支援事業」に採択され、バイオシミラーの施設整備にかかる金額の半分の支援を受ける。

カイオムは抗体医薬に強みを持ち、キッズウェルは複数のバイオシミラーを既に市場で販売するなどバイオシミラーの開発・販売に強い。マイセナックスには、施設設計や人材育成の面で協力を仰ぐ。アルフレッサは医薬品卸が主力事業だが、製造や治験も手掛ける。今回バイオ医薬品の製造や供給まで一括して担えるようにする。

バイオ医薬品は、細胞など生物の力を使って作る。たんぱく質を有効成分とし、がん免疫薬の「オプジーボ」や「キイトルーダ」などが有名だ。自己免疫疾患やがん、希少疾患など従来の医薬品では治療が難しい領域で需要が高い。

特許切れの大型のバイオ医薬品が増え、バイオシミラーの市場が拡大している。23年には、米アッヴィの関節リウマチなどの治療薬「ヒュミラ」のバイオシミラーが米国で発売された。米IQVIAによるとヒュミラは23年には世界の医薬品販売額で首位だったが、24年には23%減の286億ドル(約4兆3000億円)となり、4位に転落した。

カナダの調査会社プレシデンス・リサーチによると、バイオシミラーの市場規模は25年の403億ドルから34年には約1759億ドルにまで増加する。日本国内の市場規模は、富士経済によると、30年ごろに1200億円を突破するといい、現在、持田製薬が大手だ。

バイオ医薬品は高額で、医療費の増大が課題となっていることも普及を後押しする。国はより安価に入手できるバイオシミラーの利用を促進している。厚労省は29年度末までに「バイオシミラーの使用割合が80%以上の成分を全体の6割以上にする」との目標を掲げる。

一方、国内では先発のバイオ医薬品だけでなく、バイオシミラーについても、ほとんどを輸入に頼っている。安定供給のためには国内生産が望ましく、国は25年に補助金をつけて企業にバイオシミラーの製造拠点の整備を促した。日本ではバイオ人材が不足しているとされ、地域にバイオ工場ができれば雇用が生まれ、バイオ人材の育成にもつながると期待されている。

(坂野日向子)

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