
新たな再生可能エネルギーとして、波の力を利用して電気を生み出す「波力発電」への注目が高まっている。ただ、発電設備は世界的にもまだ開発途上にある。本格的に実用化されれば、電力の安定供給と脱炭素社会の両方の実現が期待でき、そこに商機を見いだした企業の投資が進んでいる。【水野敏和】
9月初旬、配電盤大手「日東工業」(愛知県長久手市)は、自動車部品製造「アイキテック」(同県東浦町)と鉄鋼商社「メタルワン」(東京都千代田区)と共同で、波力発電の技術開発を手がける「グローバルエナジーハーベスト」(東京都三鷹市)に出資したと発表した。
出資額は計約4億円で、発電装置の量産体制の構築や、技術改良などに充てられる。
グローバルエナジーハーベストは2006年創業の慶応大発のスタートアップ企業。独自技術で波力発電装置の開発に取り組んでおり、実用化に向けた量産モデルの開発を進めている。
同社の波力発電装置は小型なのが特徴で、環境負荷の少ない港湾や防波堤などへの設置が想定されている。
波力発電を巡っては、国内外で実証実験などが進んでいるが、激しい波や風、海水による腐食など過酷な海洋環境に耐えうる発電設備の実現には高いハードルがある。
出資3社は、それぞれの強みを組み合わせ、グローバルエナジーハーベストが進める世界初の量産型波力発電装置の開発、商品化を支援する。
日東工業は分電盤など精密機器を守る外装技術も得意分野とし、耐久性のある発電装置の筐体(きょうたい)の開発、製造を担う。
アイキテックは自動車とオートバイのエンジン部品やミッション部品製造などで培った歯車増速機のノウハウを生かし、発電効率の向上に貢献する。
メタルワンは鉄鋼商社として素材を供給するだけでなく、さまざまな企業との連携を促進し、波力発電の社会実装にむけたサプライチェーン構築の役割を担う。
日東工業のエネルギーマネジメント事業部長の小林祐輔取締役は「再エネ導入のコンサルティングや開発、施工、販売を担うグループ会社と一体となった協力体制で、波力発電事業を応援していきたい」と意気込む。
グルーバルエナジーハーベストの速水浩平社長は「日本は海洋国家で、海岸線は世界6番目に長く、波力発電には地理的にも有利。4社で力を合わせ、社会実装に向けてそれぞれの役割を果たしていきたい」と語った。
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