パネル討論に登壇した大阪府の吉村知事(8日、大阪市此花区)

テレビ大阪と日本経済新聞社は8日、ビジネスリーダーらが関西経済の未来について議論する「LBSスペシャル EXPOビジネスフォーラム」を大阪・関西万博の会場で開いた。大阪府の吉村洋文知事は万博後の大阪の都市開発について「キタとミナミだけでなく、東西の軸を強化して十字のまちづくりを進めていく」と話した。

「大阪・関西万博 未来へのレガシー(遺産)」をテーマにしたパネル討論では吉村氏のほか、関西経済同友会の永井靖二代表幹事(大林組副社長)、パナソニックホールディングス(HD)の小川理子執行役員、オリックスの高橋豊典グループ関西代表が加わった。

吉村氏は世界の観光都市はベイエリアが最も発展していると指摘。「(西のベイエリアである)夢洲(ゆめしま)を圧倒的な非日常空間に変えていく。東エリアも大阪城公園周辺の開発で世界にまねできないことをしている」と述べた。「大阪だけでなく関西を一つの単位として強くするまちづくりが必要だ」と強調した。

万博のシンボルである大屋根リングについて永井氏は「木材の活用は脱炭素とサーキュラーエコノミー(循環経済)の両立を図るレガシーになる」と話した。小川氏は万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」に関わる展示や取り組みを評価し、「理念や哲学を社会実装するという21世紀型の万博の成功事例だ」とした。

パネル討論する(左から)大阪府の吉村知事、関西経済同友会の永井代表幹事、オリックスの高橋グループ関西代表、パナソニックHDの小川執行役員(8日、大阪市此花区)

万博では未来社会に向けた新技術も多く披露された。高橋氏は空飛ぶクルマについて「国内のタクシー市場と同規模に成長する」との期待を寄せた。「100年に一度のイノベーションで、万博がなければ開発のスピードは大きく変わっただろう」と話した。

関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は基調講演に登壇。万博のレガシーを社会実装につなげることで「再び関西経済を成長軌道に乗せることができる」と訴えた。1970年の大阪万博以降は関西経済が低迷したと指摘し、「万博で披露された最先端の技術やサービスを社会実装する仕組みが不十分だった」と話した。

今回の万博では、国際イベントや海外への観光プロモーションなどを通じた、官民での継続的な取り組みが必要だと訴えた。松本会長は「今回の万博を通して関西経済を活性化させ『大関西』の実現につなげたい」と力を込めた。

基調講演する関西経済連合会の松本会長(8日、大阪市此花区)

万博で新技術などを展示した中小企業やスタートアップのトップらも、企業へのレガシーを議論した。大阪ヘルスケアパビリオンに「宙に浮く靴」を出展したリゲッタ(大阪市)の高本泰朗代表は「万博を通じて市販商品でできない挑戦ができた」と述べた。今後、高齢者介護などで介助者の負担軽減につなげたいという。

東大阪市の町工場を仮想現実(VR)で紹介した「OSAKA町工場EXPO」の目黒充明代表は「若い世代にものづくりに参加してもらえるきっかけとしたい」と語った。大阪商工会議所の広瀬恭子副会頭は「万博を通じた共創や挑戦をビジネスにつなげていくことが重要だ」と、京阪神の商議所で支援の輪を広げたい考えを示した。

「ミライ人間洗濯機」を出展したサイエンスホールディングス(大阪市)の青山恭明会長も講演し、センシング機能を付与した風呂や宇宙空間でのシャワーの実用化に意欲をみせた。

(加藤彰介、田村修吾)

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