トランプ米大統領=ホワイトハウスで2025年10月10日、ロイター

 トランプ米大統領は10日、自身のソーシャルメディアで、11月1日から中国からの輸入品に対して100%の追加関税を課す方針を表明した。レアアース(希土類)を巡る中国の輸出規制強化への対抗措置で、中国を「道義的に恥ずべき行為だ」と批判し、正当性を強調した。

 トランプ政権は現在、中国からの全輸入品に対して30%の追加関税を課している。米中は現在、閣僚級の貿易協議を続けているが、トランプ氏は中国の対応次第で100%関税の発動時期を早める構えも示した。関税引き上げが実施されれば中国が報復措置に踏み出すとみられ、米中貿易戦争が再燃する懸念がある。

 トランプ氏は10日の投稿で「中国で極めて奇妙なことが起きている。彼らは非常に敵対的になった」などと不満を述べた。中国商務省は9日、軍事目的での利用防止のため、レアアースの輸出管理を厳格化すると発表。外国企業が中国産レアアースを少しでも含む製品を輸出する際、当局の許可が義務付けられるもので、トランプ氏は半導体企業などの事業が制約される点を懸念したとみられる。中国が大規模な輸出規制を11月1日から実施する書簡を世界各国に送付したとも主張した。

 トランプ氏は関税引き上げのほか、「全ての重要なソフトウエア」への輸出規制を実施する考えも表明。その後記者団に対して「中国は多くのボーイング機を持っており、部品などを必要としている」と言及し、米ボーイング製の航空機部品の輸出を止める可能性も示唆した。

 トランプ氏はこのほか、中国の輸出規制に反発する形で、10月末に韓国で予定される習近平国家主席との対面会談について「会う理由がなくなったようだ」と一度投稿した。ただ、その後、記者団に対して「開催されるだろう」と姿勢を一転させた。首脳会談でも議題になる可能性がある。

 米中は第2次トランプ政権発足後、一時互いに100%を超える関税をかけ合う貿易戦争に突入した。その後米中は5月の閣僚級会議で大幅引き下げに合意。米国の対中追加関税は現在54%だが、うち24%は11月10日までの期限で一時停止している。

 一方、トランプ氏による大規模な対中関税の表明を受け、市場には一気に動揺が広がった。

 10日のニューヨーク株式市場は米中対立激化が懸念され、ダウ工業株30種平均は5日続落し、前日比878・82ドル安の4万5479・60ドルで取引を終えた。外国為替市場でもドル売りが広がり、円相場は1ドル=151円台前半まで円高・ドル安が進んだ。【ワシントン浅川大樹】

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