順天堂大学などの研究グループは、乳がんの抗がん剤治療で使う吐き気止め薬の1種が、推奨されている量の半分でも一定の効果を発揮することを示した。この吐き気止め薬はふらつきなどの副作用が指摘されており、投与量を減らせれば安全な治療につながる。研究成果をまとめた論文は「The Lancet Oncology」のオンライン版に掲載された。

強い吐き気の副作用がある乳がんの抗がん剤治療では、吐き気を抑える3種類の制吐剤を使うことが多い。近年は4種類目が登場したが、ふらつきなどの副作用が生じることがある。通院しながら治療を受ける患者では帰宅途中の転倒につながる可能性があるため、薬の種類や量を慎重に検討する必要がある。
順天堂大学の斉藤光江特任教授らは抗がん剤治療を受けている乳がん患者を対象に、制吐剤の使用量と効果を調べた。約半数の患者は通常の3種類の薬だけを使い、残りは4種類目も推奨されている量の半分だけ使った。すると前者のグループで吐き気を抑えられた患者は約35%の患者だったが、後者は約6割が追加の制吐剤などを使わずに済んだ。
今回研究チームが調べた抗がん剤は特に治療時に強い吐き気が出る。斉藤特任教授は「新しい抗がん剤がたくさん出てきているが、それぞれに合わせて適切な制吐剤の使い方を検討する必要がある」と指摘した。
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