「大根おろしを手間をかけずに食べたい」。逸品が生まれたのは、そんな素朴な願いがきっかけだった。活火山のふもとで育つ鹿児島県の伝統野菜を使った「桜島大根パウダー」は、2020年の発売以来、観光客や市民に愛されている。
カブのようなずんぐりとした形の桜島大根は「世界一重い大根」として03年にギネス記録(重さ31・1キログラム、胴回り119センチ)になった。辛みはほとんどなく、優しい甘みが特徴。パウダーはその風味と栄養成分が詰まっていて、1袋分(5グラム)を器に入れて水100㏄を注ぐだけで約3人分のおろしになる。細かくおろした時の滑らかな食感だ。
製造するのは、鹿児島市桜島横山町の農産物加工会社「さくらじま旬彩館(しゅんさいかん)」。代表の中島孝子さん(61)は「大根おろしが大好き」で、18年に県大隅加工技術研究センターに桜島大根を持ち込み、技術支援を受け試行錯誤しながらフリーズドライに仕上げた。
同じ年、鹿児島大が発表した桜島大根に関する報告が国際的に注目を集めた。血管機能を改善する成分「トリゴネリン」を豊富に含み、その量は青首大根の約60倍と群を抜いている、というものだ。
農学部の加治屋勝子研究教授が長年、予防医学の観点から血管に着目し、身近な食材の成分を調べる中で、桜島大根が「見間違いかと思うほど」の高い値を示した。「水分の多い桜島大根はパウダーなどに加工することで栄養分が濃縮され、少ない量でもたくさん取れる。毎日少しずつでも、未来の体は変わります」
中島さんは「おろす作業や洗い物を減らしたい一心で開発した。栄養価が証明され、売れ行きも安定していてうれしい。特有の甘みを存分に楽しんで」と話した。【田後真里】
桜島大根パウダー
5グラム、324円(11月以降は350円)。桜島港フェリーターミナルから徒歩5分の道の駅「桜島」火の島めぐみ館で販売。桜島ブランド協議会の公式オンラインショップ「ぱくぱく桜島」からも購入できる。「さくらじま旬彩館」(099・293・3387)。
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