赤字ローカル線の一つであるJR津軽線(青森県外ケ浜町の蟹田駅)

JR東日本は27日、2024年度の利用客の少ない地方路線の収支状況を発表した。36路線71区間で790億円の営業赤字だった。公表対象となった線区の赤字額は33億円増えた。新型コロナウイルス禍に先延ばしにしていた修繕を実施したことで費用がかさんだ。

1キロメートルあたりの1日の平均利用者数(輸送密度)が2000人未満の線区の収支を公表した。対象の36路線71区間すべてが営業赤字となった。運輸収入は1億円減の62億円、営業費用は31億円増の853億円だった。

営業費用が増えたのはコロナ禍で業績が悪化して延期した修繕を、業績の回復に伴って実施しているため。特に線路の修繕費の負担が重い。物価高騰による資機材の値上がりも影響した。

23年度は36路線72区間で757億円の赤字だった。前年に対象だった秋田県を走る羽越本線の羽後本荘―秋田間の輸送密度は24年度は2000人を上回ったため今回の集計からは外れた。

運輸収入100円を得るための経費(営業係数)が最もかかる区間は、宮城県と山形県を走る陸羽東線の鳴子温泉―最上間で2万2360円だった。同区間の輸送密度は国鉄民営化時の1987年度に比べて93%減っている。

JR東海を除くJR旅客5社は近年、線区ごとの赤字額を公表している。ローカル線を取り巻く厳しい実態を共有し、持続可能な地域交通の議論のたたき台とするためだ。

JR東は6月、22年8月の大雨災害で運休していた津軽線の蟹田―三厩(みんまや)間を廃止してバスや乗り合いタクシーなどの自動車交通に転換することで地元自治体と合意した。27年4月の開始に向けて準備が進む。

群馬県の吾妻線では9月、主な利用者である高校生の通学向けにバスと新幹線を利用した実証実験を始めた。同線を使うよりも1時間ほど通学時間が短くなる。今後のアンケート結果をもとに適切な交通手段を検討する。

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